セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-症例3

タイトル 内P-458:

血便を主訴に来院し,下部消化管内視鏡にて虫体を摘除し得た鞭虫症の一例

演者 所 晋之助(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター)
共同演者 増田 作栄(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター), 魚嶋 晴紀(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター), 佐々木 亜希子(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター), 金原 猛(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター), 森山 友章(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター), 賀古 眞(湘南鎌倉総合病院・消化器病センター)
抄録 【緒言】鞭虫は犬や豚などの野生動物に寄生する線虫であるが,稀に人体感染を起こすことが知られている.土壌内で虫卵が発育し,虫卵の状態もしくは感染幼虫が形成されて人体感染を起こすことがあり,土壌媒介性線虫症として扱われる.今回血便を主訴に来院し,下部消化管内視鏡にて生きたまま採取し得た鞭虫症の一例を経験したので報告する.【症例】38歳男性.来院前日夜に焼肉店で食事をした後,帰宅直後から下腹部の違和感と便器一面が鮮血で染まるほどの血便が出現.翌日になっても症状が血便が治まらないために夜間に当院救急外来を受診した.【既往歴・内服歴】特記事項なし.【身体所見】バイタルサインに異常なし.下腹部に再現性のない軽度の圧痛を認める以外は特記すべき所見なし.直腸診では赤褐色便を触れ,便潜血は陽性.肛門鏡では痔核や持続性の出血は認めなかった.【経過】採血では貧血や炎症反応の上昇は認めなかった.翌日待機的に下部消化管内視鏡を施行すると盲腸粘膜に穿入する20mm大の白色線状虫体を認めたため,鉗子にて摘除した.その後速やかに症状の改善を認め,退院となった.便培養と虫卵検査は陰性であったが,虫体の形態的特徴から鞭虫と診断.駆虫目的でmebendazole 200mg/日の内服を3日間行った.【考察】近年,世界的な交流促進や自然食嗜好などにより,既に消滅したと思われるような寄生虫が再興してきている.鞭虫症はそのような食生活や嗜好の変化に伴い,今後も下部消化管内視鏡下で遭遇する機会が想定される.内視鏡技術の発展により,虫卵検査以外で成虫の段階で発見されることも増えてくると考えられるが,はっきりとした治療方針が定まっていないのが実情であり,文献的考察も踏まえ考察する.
索引用語 鞭虫, 寄生虫