セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-症例5

タイトル 内P-468:

内視鏡にて観察し得た鞭虫,鉤虫,回虫の混合感染の一例

演者 井上 邦光(宇佐高田医師会病院・消化器内科)
共同演者 岡本 和久(宇佐高田医師会病院・消化器内科), 平下 有香(大分大・消化器内科), 小川 竜(大分大・消化器内科), 中川 善文(大分大・消化器内科), 水上 一弘(大分大・消化器内科), 沖本 忠義(大分大・消化器内科), 村上 和成(大分大・消化器内科), 藤岡 利生(大分大・消化器内科)
抄録 症例:84歳女性現病歴:近医にて慢性心不全,鉄欠乏性貧血にてフォローされていたが,労作時の呼吸困難あり,心不全の増悪が疑われ当院紹介となった.経過:血液検査にてHb4.4と著明な貧血を認め,貧血による心不全の増悪が考えられた.上部消化管内視鏡検査行ったところ,十二指腸球部に潰瘍認めたが,活動性の出血は認めなかった.入院の上輸血療法開始となったが,入院3日目に便から回虫を疑う,20cm大の線虫の死骸を排出した.大腸内視鏡検査では上行結腸―盲腸に血液混じりの便の中に約2-3cm大の白色のらせん状の鞭毛を有する虫体を多数認めた.虫体の鑑別の結果20cmの虫体は回虫であり,白色のらせん状の虫体は鞭虫であった.同時に採取した便からは鞭虫,鉤虫の虫卵を検出した.精査のため大学病院へ転院となったが,カプセル内視鏡に先立ち再度上部消化管内視鏡を施行したところ,十二指腸に鉤虫と思われる虫体を多数認め,観察中に回虫が小腸から登ってくるのが偶然観察できた.またカプセル内視鏡でも小腸内に鉤虫の寄生を確認することができた.治療:メベンダゾール3日間内服行った.治療3日後の便から虫体の排出を確認できた.また2週間後に大腸内視鏡検査を施行したが,上行結腸,盲腸には虫体は認めず,便からも虫卵は確認できず,駆虫できたと判断した.考察:回虫,鉤虫,鞭虫などの腸管寄生虫は日本では衛生状況の改善とともにほとんど見られなくなったが,近年自然食や有機栽培による食品に対する嗜好の高まりをうけ,これらの食品を介した感染が懸念されている.患者は無農薬での野菜栽培に従事しており,自分が栽培した野菜から経口感染した可能性が考えられた.また以前からの鉄欠乏性貧血の原因として寄生虫感染による可能性が示唆された.十二指腸・小腸内に回虫と鉤虫,大腸内に鞭虫の寄生を内視鏡にて観察できたまれな症例であり,文献的考察を加え報告する.
索引用語 鞭虫, 鉤虫