抄録 |
【目的】検診での大腸内視鏡検査の受容性向上と安全性を確保する為に,投与量を減量したNaPによる腸管前処置法を考案し,その有用性を明らかにする.【方法】便潜血陽性の精査及びスクリーニングの大腸内視鏡検査目的で来院した40名を対象とした.65歳以上の高血圧,腎不全,うっ血性心不全のある患者は除外した.対象は腸管前処置法としてNaP 50錠(50 g)を服用する群(A群)と,0.75% sodium picosulfate 10 ml及びNaP 30錠(30 g)を服用する群(B群)に無作為に分けられた.NaP錠は検査の約5時間前より5錠あるいは3錠づつ15分毎に200 mLの水と共に服用された.Sodium picosulfateは検査前日の夜に200 mLの水と共に服用された.大腸洗浄効果はNaP量を知らされていない内視鏡医によりOttawa scaleにより評価された.前処置完了までの時間はNaP錠服用後に透明便が観察されるまでの時間として定義した.両群は大腸洗浄効果,前処置完了までの時間,前処置の受容性において比較された.さらにB群の大腸洗浄効果と,対象の年齢,身長,体重,Body mass index (BMI),NaP量(g)/BMIとの相関を変数選択重回帰分析で検討した.【成績】対象は平均年齢54.8歳で,各々20名が両群に割り当てられた.Ottawa scaleの平均値はA群6.471,B群5.941であり,前処置完了までの平均時間はA群195.0分,B群164.8分であった.大腸洗浄効果及び前処置完了までの時間に両群間に有意差は認めなかった(各々p=0.324, 0.227, Mann-Whitney U test).前処置はA群88.2%,B群87.5%に受け入れ可能であり,前処置の受容性に両群間に有意差は認めなかった(p=0.676, Fisherの直接確率法).B群のOttawa scaleは年齢に正の相関を,NaP量(g)/BMIに負の相関を認めた(R2=0.375, p=0.047).両群において前処置による合併症は認めなかった.【結論】sodium picosulfateを併用したNaP 30錠による腸管前処置法はNaP 50錠と同等の効果と高い受容性を示し,特に若年齢,BMI低値の被験者で大腸洗浄効果が高かった.本法は検診での大腸内視鏡検査の腸管前処置法として有用である. |