セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

大腸-診断・治療3

タイトル 内P-495:

下部直腸癌の術前内視鏡下生検組織内におけるSox2,Oct4,c-Myc発現レベルの臨床的意義

演者 神藤 英二(防衛医大・外科)
共同演者 上野 秀樹(防衛医大・外科), 内藤 善久(防衛医大・外科), 識名 敦(防衛医大・外科), 岡本 耕一(防衛医大・外科), 久保 徹(防衛医大・外科), 深澤 智美(防衛医大・外科), 渡邊 智記(防衛医大・外科), 山寺 勝人(防衛医大・外科), 阿尾 理一(防衛医大・外科), 米村 圭介(防衛医大・外科), 関澤 明徳(防衛医大・外科), 木村 幹彦(防衛医大・外科), 山本 順司(防衛医大・外科), 長谷 和生(防衛医大・外科)
抄録 【目的】Sox2,Oct4,c-Mycは山中4因子に含まれ,幹細胞機能維持に重要な働きを担っていると考えられているが,臨床的意義は明らかにされていない.一方,下部直腸癌は治療方針決定にあたり,側方転移の有無などの術前診断が重要とされる.今回,術前内視鏡下生検組織内における幹細胞マーカー発現の臨床的意義について検討した.【方法】対象は1998-2007年に切除(CurA)された腹膜翻転部以下(Rb)に下縁を有するStageI/II/III直腸癌85例.術前化学放射線療法が施行された症例は含まれていない.術前の生検組織に対しSox2,Oct4,c-Myc免疫染色を施行,核への染色陽性像が癌巣全体のうちそれぞれ5,7,20%以上の癌細胞で確認できる症例を発現陽性と判定,これら3因子中2因子以上陽性の高度(H)群と1因子以下の軽度(L)群に分類し比較した.【成績】1] 陽性率: Sox2,Oct4,c-Myc陽性症例は16例(19%)32例(37%)31例(36%)で,H群は21例(25%) でL群は64例(75%)であった.2] 臨床病理学的因子との相関:H/L群の分類と年齢・性別・静脈侵襲・最大径との間に相関は認められなかった.H群では,ly中等度以上(33% vs 13%, P=0.030),深達度pT3以深(86% vs 59%, P=0.034),リンパ節転移陽性 (57% vs 33%, P=0.047) ,側方リンパ節への転移(24% vs 3%, P=0.0090)が有意に高率を示した.3]生存率曲線(disease-specific survival)の比較:H群(5年生存率51.8%)は,L群(86.3%)に比べ有意に生存率が不良(P<0.0001)であった.【結論】下部直腸癌の生検組織中の幹細胞マーカー発現程度は側方リンパ節転移率と相関するとともに,予後因子として意義を有することが示された.術前の時点において治療法選択に利用できる可能性が示唆された.
索引用語 直腸癌, 幹細胞マーカー