抄録 |
【背景と目的】pSM癌の内視鏡的摘除後の治療方針については大腸癌治療ガイドライン2010によって定められており,(1)SM浸潤度1000μm以上,(2)脈管侵襲陽性,(3)低分化腺癌,印鑑細胞癌,粘液癌,(4)簇出Grade2/3の一因子でも陽性であれば追加外科手術を考慮する,とされている.しかし,SM浸潤度1000μm以上のリンパ節転移陽性率は12.5%であり,約90%の症例は結果的にover surgeryとなっているのが現状である.今回,当院におけるpSM癌の治療成績を明らかとし,ガイドライン治療の妥当性について検討した.【方法】対象は当院において2006年5月~2009年4月に内視鏡および外科治療されたpSM癌のうち,進行大腸癌の既往や他の活動性悪性腫瘍がなく,治療後5年間以上追跡可能であった53症例.現在ガイドラインで定められている,(1)SM浸潤度1000μm以上,(2)脈管侵襲陽性,(3)低分化腺癌,印鑑細胞癌,粘液癌,(4)簇出Grade2/3をリンパ節転移・再発のリスク因子とし,リンパ節転移・再発の有無について検討した.【結果】53症例の治療内訳は,内視鏡治療で治癒切除群13例,非治癒切除で追加外科手術施行群8例,追加外科手術非施行群6例,初回手術群26例であった.リンパ節転移・術後再発は9症例に認めた(1例はリンパ節転移・再発とも陽性).リスク因子別に検討すると,SM浸潤度1000μm以上の症例では29%(9/31),脈管侵襲陽性例では35%(8/23),低分化腺癌,印環細胞癌,粘液癌では33%(1/3),簇出Grade2/3では25%(1/4)でリンパ節転移や再発を認めた.また,リンパ節転移・再発を認めた症例では,全例で2項目以上のリスク因子を認めた.リスク因子該当数が1項目のみの症例を10症例(8例はSM浸潤度1000μm以上,残り2例は脈管侵襲陽性)認めたが,全例,観察期間中リンパ節転移・再発は認めなかった.【結論】内視鏡治療非治癒切除の判定には,リスク因子を組み合わせた検討により,より正確にリンパ節転移・再発を予測できる可能性が示唆された. |