セッション情報 ワークショップ9(消化器病学会・消化器内視鏡学会・消化器外科学会合同)

分子診断学からみた大腸腫瘍の治療成績と予後

タイトル 外W9-9:

高感度レクチンアレイを用いた大腸癌の糖鎖プロファイリング-新しい再発予測マーカーの確立-

演者 中嶋 健太郎(大分大・1外科)
共同演者 猪股 雅史(大分大・1外科), 北野 正剛(大分大・1外科)
抄録 【目的】多くのタンパク質や脂質は、糖鎖が付いた糖タンパク質や糖脂質となることで、様々な機能を発揮する。糖鎖は、生体の重要な構成成分であり、生命活動において重要な役割を果たすことから、第3の生命鎖とも呼ばれている。正常組織は前癌病変、癌組織へと変化するに従い細胞表面の糖鎖構造が修飾され、変化を生じる。今回我々は糖鎖結合性タンパク質であるレクチンを用いて、ヒト大腸癌組織を対象とし、大腸癌に特有の糖鎖プロファイリングを解析、リンパ節転移、遠隔転移に関連するレクチンを同定するとともに、再発予測マーカーとしてレクチンマイクロアレイの有用性を検討した。【方法】64例の大腸癌手術標本から採取した大腸癌組織、非癌部組織を使用した。組織より抽出した膜タンパク質をBCA法にてタンパク質定量し、cy3で蛍光標識した。糖鎖を認識するレクチン45種類を固層化したレクチンアレイ(GP BioSCIENCES)を使用して糖鎖プロファイリングを解析した。腫瘍部/非癌部のシグナル比を算出し、臨床病理学的因子との関連を検討した。【成績】大腸癌ではα1,6-Sia 認識レクチンSNA,SSA,およびα1,6-branched mannose認識レクチンHHL,GNAのシグナルが上昇し、α-GalNAc認識レクチンDBA,β-GalNAc認識レクチンWFAのシグナルが低下していた。リンパ節転移陽性症例は陰性症例に比べ、有意にレクチンPSA,TJA-I,GNA,HHLのシグナル上昇、及びPHA(E),TxLC,WFAのシグナル低下が認められた。遠隔転移を有する症例では遠隔転移なしの症例と比べ、有意にレクチンPSA,LCA,AOL,GNA,VVAのシグナル上昇及び、レクチンRCA120,PHA(E),TxLC1,BPL,UDA,ACAのシグナル低下を認めた。根治切除を行った56例を対象とし、臨床病理学的因子とレクチンシグナル値を用いた多変量解析を行ったところ、HHL(p=0.001)、ABA(p=0.006)の上昇が有意に無再発生存率の低下に関与していた。【結論】レクチンHHL、ABAの新たな再発予測マーカーとしての有用性が示された。
索引用語 糖鎖, レクチンアレイ