抄録 |
【目的】食道癌の化学放射線療法(CRT)後の腫瘍の再発・増大による食道狭窄は,しばしばQOLの低下の原因となるが,CRT後の食道金属ステント留置は穿孔の危険性が高く,回避されることが多い.今回,我々はバルーン拡張術を併用したより安全なCRT後の食道金属ステント(MS)留置法を報告する.【方法】食道MS留置にバルーン拡張術を先行させ,拡張術後の出血や裂創より,CRT後の食道壁の脆弱性を評価し,径14mmまたは径18mmのMSの選択を行って留置した.【対象】2008年2月より2012年11月までの4年9か月の間に,CRT後の食道狭窄に対しMSを留置した9症例とし,ステント選択,治療効果,合併症などについてretrospectiveに検討した.【成績】平均年齢は,68.3歳.前の臨床病期はII 2例,III 1例,IVa 6例で,いずれもCRT後の原発巣の再発・増大による食道狭窄をきたした.全例に食道MS留置前のバルーン拡張を施行し,その最終拡張径は12mm 6例,13.5mm 2例,15mm 1例で,留置したMSは気管用Ultraflex(14mm) 5例,食道用Ultraflex(18mm) 3例,HANARO(18mm) 1例であった.食道MSの初回留置はCRTの終了後平均7.6ケ月で,5例(55.6%)は5分粥以上の経口摂取が可能となり,全例で退院可能となり,MS留置後の在院日数は平均11.7日であった.早期合併症としては疼痛と発熱をそれぞれ4例に認め,後期合併症としては腫瘍の増大による再狭窄を4例に認めたが,うち3例はStent-in-stentで解除することにより,8例(88.9%)で終生ステントの開存を維持した.穿孔など重篤な合併症は認めず,MS留置後の予後はMST 4ケ月であった.【結論】CRT後の食道癌の食道狭窄に対するMS留置をより安全に行うため,食道バルーン拡張術併用によるステント径の選択が有用である. |