抄録 |
症例は75歳,男性.嚥下困難を主訴とし,近医を受診.内視鏡で腹部食道に1型腫瘍を認め,当科紹介となる.術前化学療法としてCDDP80mg/sq(day1),5FU 800mg/sq(day1-5)を2コース行い,最終化学療法より22日目に胸部食道亜全摘(D2郭清),食道胃管胸腔内吻合を施行した.7PODに発熱・呼吸困難が出現し,消化管造影にて縫合不全を認めた.同日夜間,ARDSの進行により呼吸器管理となった.幸いにして13PODに呼吸器管理から離脱でき,同日消化管ステントを吻合部に挿入した.15PODには白血球数は基準値内に戻り,解熱も得られた.16PODに消化管造影を施行したが,造影剤の消化管外漏出は認めず,19PODより経口摂取を再開した.縫合不全による膿胸に対しては,洗浄ドレナージを行ったが,30PODには胸腔ドレーンを抜去でき,37PODには退院となった.(考案)食道癌術後再建における胸腔内吻合の縫合不全は縦隔炎・膿胸を併発し,致死的となることがあるが,本症例ではステント挿入により管腔外へ消化管内容物の漏出が抑制されることで,感染症管理・栄養管理がきわめて容易となり,入院期間の短縮に大きく寄与したと思われた. |