セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

食道-症例4

タイトル 内P-551:

アルコール多飲者の多発食道潰瘍,食道気管支瘻に対して保存的加療にて軽快した1例

演者 関藤 剛(呉共済病院・消化器内科)
共同演者 岡本 志朗(呉共済病院・消化器内科), 津島 健(呉共済病院・消化器内科), 畠山 剛(呉共済病院・消化器内科), 野間 文次郎(呉共済病院・消化器内科), 児玉 寛治(呉共済病院・消化器内科), 山口 修司(呉共済病院・消化器内科)
抄録 症例は40代男性,主訴は発熱.現病歴は1年前より食べ物が詰まり嘔吐を繰り返していた.3か月前より食べ物が詰まる頻度が増え食事摂取量は減少し,受診前の1週間はほとんど食事摂取が出来ず,うどんなどを少量摂取していた.水分摂取でも嘔吐することがあった.発熱は受診4日前より出現し,精査希望目的で受診した.既往歴は十二指腸潰瘍を繰り返して通過障害があり幽門側胃切除,吻合部からの腹膜炎で手術歴あり.生活歴は喫煙を40本×24年,飲酒はビールをほぼ毎日1~2リットル.受診時の体温は38.0℃,右腰背部に自発痛を認めた.血液検査では著明な炎症反応上昇があり,低栄養も認めた.当日胸部CT検査を施行し,中部から下部食道に全周性の壁肥厚を認め,食道・気管周囲のリンパ節腫大を認めた.右下肺に浸潤影あり,肺膿瘍が疑われた.これらが画像上連続しており,食道穿孔による食道気管支瘻,肺膿瘍が疑われた.同日より抗生剤加療,中心静脈栄養を開始した.数日後,胸部レントゲン写真で右下肺の陰影が縮小しており,食道透視を施行し造影剤のleakはあるも通過は良好であることを確認し,上部消化管内視鏡検査を施行したところ,食道全域に多発潰瘍,深掘れ,架橋形成を認めた.生検施行するも悪性所見は認めなかった.食道穿孔・肺膿瘍に対する外科的治療も検討したが,血液検査では炎症反応の改善をみとめ,解熱したため,保存的加療を継続した.炎症性腸疾患や,ウイルス感染を疑い検査するも特記所見は認めなかった.その後,さらに肺膿瘍は改善し,食道造影・造影後の胸部CT検査でも食道からのleakを認めなくなったため,食事摂取を開始し,軽快,退院となった.今回われわれはアルコール多飲者の多発食道潰瘍,食道気管支瘻を経験した.食道気管支瘻に対しては手術を施行することが多く,保存的加療にて改善した症例は珍しいため,若干の文献的考察を加えて報告する.
索引用語 食道潰瘍, 食道気管支瘻