セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

食道-診断

タイトル 内P-554:

上部消化管内視鏡スクリーニングでの食道表在癌の拾い上げにおける工夫

演者 小熊 潤也(日本鋼管病院・外科)
共同演者 岩崎 靖士(日本鋼管病院・外科), 岡本 譲二(日本鋼管病院・外科), 清水 壮一(日本鋼管病院・外科), 高橋 伸(日本鋼管病院・外科)
抄録 【目的】食道はその大部分が縦隔内に位置するため,大血管や気管による圧排や心拍動,さらには呼吸の影響も受けやすい.また内視鏡観察において胃に比べ接線方向となる部分が多く,精密な観察が難しい臓器である.上部消化管内視鏡検査では食道の観察は必須であるが,その正確さについては内視鏡施行医によりばらつきがあるといわざるを得ない.食道表在癌を早期に発見するための最良の内視鏡検査法はどのようなものか,日々試行錯誤を続けている中で,現時点で施行している検査方法を提示し,今後目指すべき方向性について考察した.【方法】まず検査にあたって,食道が長軸方向に細長い管腔臓器であることを意識し,食道内でスコープがスムーズに動くようにスコープを把持する.ガスコン水による洗浄で粘膜表面の粘液,泡等の除去を必ず行い,その後送気して食道壁を可能な限り進展させる.心拍動を目安に周在性を一定にし,常にスコープは内腔の中央に位置するようにする.食道の観察は送気,洗浄が十分に行える内視鏡挿入時が最も重要で,白色光による通常観察を中心に行い,粘膜の発赤,凹凸,白苔の付着などを注意深く観察する.さらに適宜NBIに切り替えてbrownish areaの確認を行う.一方抜去時はNBI観察を中心に行い,粘膜の微細な色調変化を拾い上げるよう努める.疑わしい所見があれば,NBI拡大観察やヨード染色を適宜行い,深達度および範囲診断を進めていく.【成績】2012年1月から12月までの1年間で,当院で施行した338例の上部消化管内視鏡によるスクリーニング検査のうち,10例で食道表在癌を疑った.そのうち病理学的検査を行った症例について,2例(0.6%)が上皮内腫瘍,5例(1.5%)が食道表在癌の診断であった.【結論】食道表在癌を拾い上げるためには,新しい診断モダリティーが普及してきている今日においても,あくまで内視鏡挿入時の精密な通常観察を基本とし,毎回の検査で“当たり前のことを同じように行っていく”ことが最も重要である.
索引用語 食道表在癌, 上部消化管内視鏡検査