セッション情報 | ポスターセッション(消化器内視鏡学会)食道-GERD/静脈瘤 |
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タイトル | 内P-572:内視鏡的食道静脈瘤硬化療法にて硬化剤が左胃動脈に流入し,巨大胃潰瘍を形成した一例 |
演者 | 奥山 俊介(市立岸和田市民病院・消化器内科) |
共同演者 | 藤井 善憲(市立岸和田市民病院・消化器内科), 星 智子(市立岸和田市民病院・消化器内科), 田中 裕一(市立岸和田市民病院・消化器内科), 毛利 陽一(市立岸和田市民病院・消化器内科), 木村 昇(市立岸和田市民病院・消化器内科), 高谷 晴夫(市立岸和田市民病院・消化器内科), 梶村 幸三(市立岸和田市民病院・消化器内科) |
抄録 | 症例は62才男性で,アルコール性肝硬変に伴う食道静脈瘤破裂にて当院へ救急搬送された.下部食道の出血部位に対して内視鏡的食道静脈瘤結紮術(EVL)にて止血術を行い,後日待機的に内視鏡的食道静脈瘤硬化療法(EIS)を施行した. 硬化剤は食道静脈瘤から供血路である左胃静脈まで注入され,静脈瘤の縮小効果が期待できた.翌週も同様にEISを行なったところ,前回硬化剤が注入された左胃静脈は造影されずに,胃小弯側に沿って走行する細い血管が描出され,EISを終了した.しかし,後日黒色便を認めたため内視鏡検査を行うと,胃噴門部から胃角部に広がる巨大な出血性胃潰瘍が形成されていた.これは,EIS時に造影された胃小弯側の細い血管は左胃動脈であり,硬化剤が同動脈に流入することにより胃壁に広範囲な虚血が生じたためと考えられた.この巨大胃潰瘍からの出血に対して,合計8回の内視鏡検査及び止血術と,濃厚赤血球50単位,濃厚血小板25単位,新鮮凍結血漿34単位の投与を必要とし,約一ヶ月半の後にようやくhealing stageとなった. 従来,食道静脈瘤の成因は,門脈圧が亢進し,左胃静脈・短胃静脈系などを経由して大循環系へ流入する副血行路として形成されるものと考えられていた.その一方で,左胃動脈・固有食道動脈などからの動脈血流が食道静脈瘤に流入し,その発症機序に関与していることも示唆されている. 本症例では,当初EISにて主な供血路である左胃静脈の硬化療法に成功し,門脈系からの遠肝性供血路を遮断し得たが,その後のEIS時には門脈系以外の供血路,即ち左胃動脈へ硬化剤が流入することにより,同動脈の還流領域が広範囲に渡って虚血に陥り,巨大胃潰瘍を形成したものと考えられる.左胃静脈に加えて左胃動脈も供血路となっている場合は,EIS時に硬化剤が動脈へと流入し,本症例のような重篤な合併症を併発する可能性があり,硬化療法時には注意が必要である. |
索引用語 | 食道静脈瘤硬化療法, 胃潰瘍 |