抄録 |
【はじめに】当院に併設する高度救命救急センターは,ドクターヘリ導入もあり福岡県南部筑後地方の三次救急医療機関として同地区だけでなく, 県内外の二次救急病院からも紹介,依頼が多い.消化器領域では静脈瘤出血,特に他施設では治療経験や技術的問題から治療困難な胃静脈瘤や異所性静脈瘤などが紹介されるケースが多い.当センターにおける静脈瘤出血の治療成績,傾向などをretrospectiveに検討した.【対象】2008年1月から2012年12月までに当センターに搬入された門脈圧亢進症に伴う静脈瘤出血症例66例. 出血部位は食道28例,胃噴門部14例,胃穹窿部18例,十二指腸5例,ストーマ1例.【結果】症例は男性47例,女性19例,年齢中央値62.5歳(24~83歳),背景肝疾患はHCV32例,アルコール26例,HBV2例,NASH2例,PBC2例,AIH2例,PSC1例,日本住血吸虫症1例,先天性肝線維症1例,不明2例であった(重複症例を含む).HCC合併例は16例でそのうちVp症例5例.搬入時のChild-Pugh A/B/C 4/34/28であった.搬入時ショック症例は22例.死亡例は6例あり,そのうち搬入時ショック症例が5例,Child-Pugh grade Cが5例,Vp症例が1例であった.治療法(前医での治療は除く)は食道静脈瘤に対してはEVL23例,EIS4例,治療中容体悪化で遂行出来ない症例が2例あった.噴門部静脈瘤はEVL5例,EIS7例,CA局注2例.穹窿部静脈瘤はCA局注14例,B-RTO2例,追加EIS1例,治療中止1例であった.十二指腸静脈瘤はCA局注4例,1例は出血点が判らず血管造影・塞栓術を行なうも死亡.ストーマ静脈瘤1例はCA局注にて治療を行なった.止血率は93.9%で,止血できなかった4例はいずれも死亡している.【結語】二次救急で治療困難と思われる胃静脈瘤・異所性静脈瘤などの症例が多く,またショックバイタルや肝予備能の悪い症例が多い傾向であった.食道・胃噴門部静脈瘤に対してはEVL,EISが,胃穹窿部静脈瘤やその他の異所性静脈瘤はCA併用EIS,可能であればB-RTOを第一選択で治療を行なっている. |