抄録 |
21世紀を迎えて早くも10余年が経過した。この間、医学の世界は、20世紀に経験したような革新的展開の萌芽をみているであろうか?抗生物質、放射線、DNA等はもちろん、CT,MRI等の画像診断、分子生物学的診断・治療は前世紀の偉大な功績であった。消化器病学の領域においても、放射線診断、内視鏡診断治療、胃酸分泌抑制薬の発見、H.pylori除菌による消化性潰瘍の治療及び胃癌の予防、インターフェロンによる肝炎ウイルスの除去と肝癌の予防並びに治療等々多くの医学的発見により、人類は大きな福音を享受してきた。他方、薬害によるAIDSや肝炎など負の場面も経験してきた。今世紀の世界的不況は、医学研究の進歩を阻害し、医療の世界をも圧迫し続けている。我が国の医師不足を中心とする地域医療の崩壊の解決も喫緊の課題である。東日本大災害、放射能汚染も解決すべき重大な問題である。このような状況の中で、新時代を担う若き消化器医は何を目指すべきか?まず第一になすべきことは、消化器領域に優秀な人材を集めることである。第二に、臨床医学の重要性とともに研究面の重要性を再認識することである。第三に、最近低調になってきている国際性を重視する必要がある。第四に、前会長が指摘されたトランスサイエンス、つまり純粋医学とともに社会的問題点を総合的に認識し問題を解決すべきである。そして、疾患の本質、その原因となる根源を冷静に抽出することである。22世紀の後輩たちに誇れるような21世紀の創造的医学は、serendipityを重視する若き消化器医の肩にかかっている。 |