抄録 |
【目的】近年,職域における胃癌の内視鏡的検診が増加しているが,経鼻内視鏡検査を希望する被験者が多い。しかし,経鼻内視鏡による胃癌発見率は,経口内視鏡に比して低率であるとの報告もあり,その有用性に関しては一定の見解が得られていない。そこで,内視鏡検査による胃癌検診を受けた症例を対象として,経口内視鏡と経鼻内視鏡の差異を検討した。【方法】関東地方の某職域で2008年4月から2011年12月までに胃内視鏡検診を受けた延べ9,566例(男:7,100,女:2,166,平均年齢54±10[SD]:35~79歳)を対象とした。同施設の検診では,経口ないし経鼻内視鏡を自由に選択可能である。経口内視鏡は富士フィルムメディカル社製EG-590WR、経鼻内視鏡は同社製EG-530NないしEG530N2を使用した。【成績】7,208例は経口内視鏡を,2,358例は経鼻内視鏡を施行した。経鼻内視鏡の受診者は,2008年が12.8%,2011年が32.6%で,年々増加していた。4年間で発見された胃癌は経口群が27例(0.38%),経鼻群が6例(0.25%)で,両群間で差異は見られなかった(p=0.43)。このうち未分化型癌は経口群9例,経鼻群が1例で,同様に差異は認められなかった(p=0.21)。【考察と結語】経鼻内視鏡の需要は今後も増加すると考えられる。経鼻内視鏡では未分化型癌の発見がやや少ない傾向にあるが,機器の発展で差異は認められなくなっている可能性があり,今後の検討が必要である。本来,経鼻内視鏡に最も適した受診者はHelicobacter pyloriの未感染者であり,血清ペプシノゲン法では陰性であるABCD分類のA群の症例に相当する。経口内視鏡と経鼻内視鏡の適応は,Hp抗体やPG法との関連で決定するのが望ましいと考えられた。 |