セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

その他-抗血栓薬1

タイトル 内P-643:

抗凝固薬の休薬下における内視鏡治療後に血栓塞栓症を発症した2例

演者 坂牧 僚(新潟県立中央病院・消化器内科)
共同演者 有賀 諭生(新潟県立中央病院・消化器内科), 山川 雅史(新潟県立中央病院・消化器内科), 津端 俊介(新潟県立中央病院・消化器内科), 平野 正明(新潟県立中央病院・消化器内科)
抄録 内視鏡治療における偶発症として術後出血が大きな割合を占める.特に抗凝固薬を使用している場合の出血は高頻度かつ重篤になる危険性が高いことが示されている. 一方,抗凝固薬は心房細動に伴う血栓塞栓症の予防および再発防止に有用であり,抗凝固薬を短期間でも中断した場合には血栓塞栓症のリスクが高くなることが報告されている. 今回われわれは,ガイドラインに準じて抗凝固薬を休薬したにも関わらず,術後に重篤な血栓塞栓症を発症した2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する. 症例1は63歳女性で,僧房弁弁膜症,心房細動,脳梗塞の既往がありワルファリンカリウムを内服していた.表在型食道癌に対する内視鏡的食道粘膜下層切開剥離術の術後3日目に右総頸動脈の閉塞をによる広範な急性脳梗塞を認め,術後5日目に死亡した.病理解剖はご家族の同意が得られず施行しなかった. 症例2は60歳女性で,左横静脈洞血栓症の既往がありワルファリンカリウムを内服していた.総胆管結石に対する内視鏡的乳頭切開術の術翌日に右後大脳動脈領域に広範な急性脳梗塞を認めた.高次脳機能障害などの後遺症は残存したものの発症2か月後に退院した. 2012年に日本消化器内視鏡学会から発表された「抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡診療ガイドライン」では,血栓塞栓症の高発症群に対する高危険度処置に対しては,事前に処方医と相談し休薬の可否を検討し,ワルファリンカリウム単独投与の場合はヘパリン製剤と置換し,服用開始は内視鏡的に止血が確認できた時点からとしている. 今回の2症例はいずれも処方医の指示に従いワルファリンカリウム休薬あるいはヘパリン置換を施行していたにも関わらず,重篤な血栓塞栓症を発症した. 個々の症例に応じて治療をすべきかどうかを決定する必要があるが,治療の危険性を判断するにあたり,更なる症例の蓄積と,それに基づいたガイドラインの改定が望まれる.
索引用語 偶発症, 血栓塞栓症