抄録 |
【背景】2012月7月に日本消化器内視鏡学会より抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが示された.その内容は血栓性偶発症の誘発防止をより重視して作成された指針となっている.しかしそのガイドラインの有用性の評価はいまだ確立しているとはいえない.【目的】新ガイドラインに準じ, 抗血栓薬服用下で行われた上部・下部内視鏡下生検の現状について検討すること.【対象】2012年7月から2013年2月までに新ガイドラインに準じ,抗血栓薬服用下で実施した上部内視鏡下生検13例 29生検(抗血栓薬1剤:12例 28生検, 2剤:1例 1生検),下部内視鏡下生検5例 13生検(抗血栓薬1剤:5例)を対象とした.使用した生検鉗子は上部:FB-231K 最大外径1.9mm (オリンパス社),下部:FB-220U 最大外径2.8mm(オリンパス社)であった.【検討項目】1)男女比, 2)平均年齢, 3)抗血栓薬の種類, 4)部位(上部,:U/M/L/D, 下部:C/A/T/D/S/R), 5)生検時止血処置の有無, 6)後出血の有無, 7)血栓性合併症の有無を上部,下部各々で検討した.【結果】(上部) 1)男:女=9:4, 2)平均75.7歳(63-86歳), 3)抗血栓薬1剤:低用量アスピリン(以下LDA)/シロスタゾール/ワルファリン/ダビガトラン=9/1/1/1, 2剤:LDA+チクロピジン:1, 4)(U/M/L/D=6/4/14/5), 5)生検時止血処置例なし, 6)後出血例なし, 7)血栓性合併症例なし.(下部)1)男:女=4:1, 2)平均75.2歳(68-82歳), 3)抗血栓薬の種類 1剤:LDA/シロスタゾール/ワルファリン/ダビガトラン=3/1/1/0, 4)(C/A/T/D/S/R=1/3/0/2/2/5), 5)生検時止血処置例なし, 6)後出血例なし, 7)血栓性合併症例なし.【考察】新ガイドラインに準じた抗血栓薬服用下での上部・下部内視鏡下生検ではいずれも生検時止血処置を要した例はなく,後出血例・血栓性合併症とも認められなかった.今後さらに症例を蓄積し新ガイドラインの妥当性を検討する必要があると考えられた. |