抄録 |
【背景】肝門部胆管狭窄を有する切除不能胆道癌の場合,従来,片葉ドレナージで十分との報告がこれまで多くなされている.しかし,切除不能胆道癌に対する標準治療と考えられるようになったGEMとCDDPの併用療法(GC療法)は,GEMやS-1単剤療法に比して,骨髄抑制の頻度・Gradeが高いため,従来と同様に片葉ドレナージで十分かは検討が必要である.【目的】肝門部胆管狭窄を有する切除不能胆道癌において, GC療法を受けた患者とGC以外の治療を受けた患者において,治療中の胆管炎の頻度が異なるかを評価し,GC療法を行う際も片葉ドレナージで十分であるかを検討すること.【方法】2006年8月から2012年10月までに当院にて治療開始された肝門部胆管狭窄を有する切除不能胆道癌患者45例につき,胆管炎発症までの期間をRetrospectiveに解析した.【結果】患者背景は,原疾患;肝外胆管癌/肝内胆管癌/胆嚢癌=22/9/14例,UICC stage 2-3/4=15/30例,一次化学療法GC/GC以外(GEM,S-1など)=18/27例,最良抗腫瘍効果PR/SD/PD/NE=4/26/10/5例であった.一次治療GC療法を受けた症例のうち,片葉/両葉ドレナージ=12/6例であり,胆管炎発症までの期間の中央値は4.2/14.8ヶ月(p=0.22)であった.胆管炎発症までの期間に寄与する因子として,治療レジメン(GC以外 vs GC),ステント留置部位(両葉 vs 片葉),抗腫瘍効果(PR-SD vs PD),好中球減少程度(Grade 3-4 vs Grade 0-2)の4因子による多変量解析を行うと,GC療法,および好中球減少Grade 3以上の症例が有意に胆管炎発症までの期間が短かった(HR6.93, p=0.027およびHR6.08, p=0.041).【考察】GC療法ではGrade 3-4の好中球減少が72%と,GC以外の18%に比べて多かったため,胆管炎を来たしやすかったものと推測され,抗腫瘍効果による狭窄の改善効果よりも影響が大きいと考えられた.【結語】肝門部胆管狭窄症例にGC療法を行うに当たっても,両葉ドレナージは必須でないと考えられた. |