セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

胆管結石4

タイトル 内P-713:

完全内臓逆位症を伴う総胆管結石患者に対するERCP関連処置の経験

演者 古志谷 達也(大和健診センター)
共同演者 清水 謙二(男山病院・外科), 福田 正順(男山病院・外科), 桂 長門(男山病院・外科)
抄録 症例は50代,女性.高血圧症,脂質異常症にて近医に通院加療中であった.前日よりの発熱,心窩部痛を主訴に同院を受診し,腹部US検査にて胆嚢結石,胆嚢壁肥厚を指摘され,急性胆嚢炎の診断にて当院の関連病院を受診した.理学所見上,腹部は平坦,軟で心窩部に圧痛を認めた.腹膜刺激所見は認めなかった.血液検査上,WBC 8790 /μL,CRP 2.24 mg/dLと軽度の炎症反応の上昇を認め,AST 232 U/L,ALT 383 U/L,γGTP 423 U/L,ALP 690 U/L,T-Bil 5.2 U/L,AMY 158 U/Lと肝,胆道,膵酵素の上昇と黄疸を認めた.腹部造影CT検査では,完全内臓逆位であり,胆嚢結石,胆嚢炎の所見を認めたが,肝内胆管の拡張は認めなかった.腹部MRI / MRCP検査では,胆嚢結石の他に総胆管にも小結石の存在が疑われた.抗生剤投与による保存的加療により血液検査所見の改善を認めた為,待機的にERCP検査を施行した.完全内臓逆位の為,患者を右側臥位とし術者は右側よりスコープを挿入した.スコープ先端が十二指腸下降脚に到達後,患者を腹臥位とし,上および左アングル操作後,反時計回転でスコープを直線化し乳頭部を正面視した.総胆管末端部の屈曲の為,胆管挿管にやや難渋したが,最終的にwire-guided cannulation法にて選択的胆管挿管に成功した.1時方向へ内視鏡的乳頭括約筋切開を行い,リトリーバルバルーンにて総胆管内の小結石を除去した.術後,軽度の急性膵炎を発症したが保存的加療にて軽快し,検査後5日目に腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された.手術後の経過は良好で,術後5日目に退院となった.内臓逆位症は臓器の一部または全てが左右逆転する約5千~1万人に1人の割合で発見される稀な先天性疾患である.完全内臓逆位症に対するERCPの報告例は散見されるが,検査中の患者の体位が問題となる.本症例の様に患者を右側臥位から腹臥位とし,ミラーイメージで手技を遂行することにより,通常位と同様の手技が完遂できると考えられ,文献的考察を加えて報告する.
索引用語 完全内臓逆位症, ERCP