抄録 |
【はじめに】膵疾患診療において,各種画像診断の進歩やEUS-FNAの普及により,診断的ERCPの機会は減少したが,治療的ERCPの必要性は揺るぎない.中でも,疾患特異性や解剖学的理由により経副乳頭アプローチから治療の活路を見出す症例も存在する.当科で経験した経副乳頭アプローチ症例の検討に症例提示を加え報告する.【方法】2003~2012年6月までの8.5年間でERCPを施行した膵疾患症例999例のうち,経副乳頭アプローチを行った42例(男/女 31/11, 平均年齢61.3歳)を対象とした.【結果】(1)目的:治療25例;59.5%(仮性嚢胞ドレナージ5例, 膵管狭窄・膵石治療9例, 内視鏡的乳頭腺腫切除前評価6例),診断17例;40.5%(膵炎原因検索6例, 膵腫瘍精査9例, その他2例).後者の7例;41.2%が膵管非癒合症例であった.(2)経副乳頭アプローチ理由:副膵管領域の病変15例;35.7%,主乳頭経由の処置困難11例;26.2%(膵管口同定困難4例, 膵管走行の問題4例, 膵石・膵管狭窄3例), 膵管非癒合10例;23.8%, 内視鏡的乳頭腺腫切除前6例;14.3%.(3)処置内容:副膵管造影28例;66.7%,副乳頭拡張術13例;31.0%, 副膵管ステント留置16例;38.1%.拡張・ステント留置例の3例が主乳頭から副膵管へワイヤーを誘導し手技を行った症例であった.副膵管処置に伴う合併症や病態の悪化は認めなかった.【考察・結語】副乳頭の開存率は約4割と報告され,経副乳頭的内視鏡治療は全例に適応できる手技ではない.しかし,主乳頭アプローチ困難例において比較的安全に有効な治療となる可能性があり,各種画像検査で膵管の走行を十分評価した上で施行する価値のある手技である. |