抄録 |
【背景】当院は高齢・認知症例が多いため2011年3月よりERCP時の鎮静を麻酔科専門医に依頼し,同年11月にプロポフォールを導入した.当院での使用結果を報告する.【対象・方法】2011年3月~2012年12月の高齢者ERCP初回施行例中,プロポフォール非投与7例(NP群)とプロポフォール投与8例(P群)を対象に呼吸循環動態,術後合併症を比較検討した(Mann-Whitney U検定,有意差:p<0.05).呼吸循環動態は収縮期血圧(SBP),脈拍数(PR),経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の開始前,開始直後,術中最高・最低,終了時の5点値と,SBP<90mmHg,PR<50/min,SpO2<90%の頻度を検討した.プロポフォール投与には十分なインフォームド・コンセントを行い,酸素2l/min経鼻投与,生体情報モニタ装着,救急カート配備,deep sedationで施行した.【結果】性別,年齢,施行時間(平均)はNP群:M2例,F5例,80~92歳(84.6歳),42~218分(87.9分),P群:M1例,F7例,78~93歳(84.0歳),16~159分(71.3分)で有意差なく,他の背景因子,術後合併症にも差がなかった.薬剤(平均投与量)詳細はNP群:ミダゾラム(3.5mg)単独2例,ミダゾラム(6.4mg)&ペンタゾシン(25.5mg)併用5例,P群:プロポフォール(218.7mg,5.4mg/kg/h)単独2例,ミダゾラム(2.7mg)&プロポフォール(125.7mg,2.7mg/kg/h)併用6例であった. 5点値平均値(NP群:P群)は SBP (146.1:147.3),(133.1:164.1),(178.7:179.0),(109.1:108.6),(124.3:128.0),PR (77.7:94.3),(95.6:106.6),(141.4:130.3),(81.7:88.9),(108.3:94.6),SpO2:(97.6:99.0),(99.1:99.6),(100:100),(91.3:95.9),(98.6:98.4)と有意差なく,SBP低下例(2:1),PR低下例(0:0)にも差はなかったが,SpO2低下例(3:0)では P群が有意に少なかった (p:0.0293).プロポフォール投与中の呼吸循環変動は,投与量調整で速やかに改善した.単独投与2例は導入:8mg/kg/h,維持:2~6mg/kg/hで良好な鎮静が得られた.【まとめ】高齢者ERCP症例でのプロポフォールによる鎮静は有用と思われた.至適投与法は症例を蓄積して検討したい. |