セッション情報 ポスターセッション(消化器内視鏡学会)

ERCP関連偶発症2

タイトル 内P-776:

ERCP関連手技に伴う胆管後腹膜穿孔と膵内胆管の局所解剖との関連

演者 片倉 芳樹(聖隷横浜病院・消化器内科)
共同演者 足立 清太郎(聖隷横浜病院・消化器内科), 浅木 努史(聖隷横浜病院・消化器内科), 安田 伊久磨(聖隷横浜病院・消化器内科), 豊水 道史(聖隷横浜病院・消化器内科), 吹田 洋將(聖隷横浜病院・消化器内科)
抄録 【背景】Wilasrusmeeらは剖検例での検討で膵内胆管の局所解剖は胆管後面の一部のみが膵実質に覆われないtype Aが87%,全周が覆われるtype Bが9%,膵実質に覆われないtype Cが4%の3種が存在したと報告している(J Hepatobiliary Pancreat Surg 6;1999).また,ERCPでのあらゆる後腹膜穿孔の頻度は0.3-0.6%と報告され,胆管後腹膜穿孔の頻度はさらに少ない.【目的】当院でのERCP偶発症の実態を明らかにし,とくに膵内胆管の局所解剖と胆管後腹膜穿孔および処置内容の関連を検討する.【方法】2010年4月より2012年12月に当院で施行したERCP342件(229例)を対象に,前述の分類を基に腹部CTないしはMRIを2名の消化器内科医で読影し, 膵内胆管の局所解剖を診断した.分類困難例は境界型とした. 膵内胆管の局所解剖と偶発症の関連について,とくに胆管後腹膜穿孔例において処置内容も含めて検討した.【結果】偶発症は13件(3.8%)で発生し,内訳は膵炎6件(1.8%),出血3件(0.9%),バスケット嵌頓と胆管後腹膜穿孔が各々2件(0.6%),胆道炎1件(0.3%)であった.穿孔例は,両例とも傍乳頭憩室および胆管炎を認めない総胆管結石例でEST後バルーン排石術が施行された. 両例ともEST時とバルーン排石時に疼痛が観察され,その後も持続した.1例はENBD留置にて保存的に改善したが,1例では手術を要した.保存治療例は内視鏡下に穿孔腔を目視できなかったが,手術例では穿孔腔を確認できた. 膵内胆管の局所解剖はAが77.9%,A/Bが8.5%,Bが6.1%,Cが2.3%,C/Aが5.2%と読影され,穿孔例は保存改善例がC,手術例がC/Aに該当した.CおよびC/Aの16例(21件)の内訳は総胆管結石が13例,EST施行が13例,バルーン排石術が10例であった.【結語】膵内胆管の局所解剖にはバリエーションがあり,ERCP前に確認することは重要で,とくにtype CおよびC/Aは解剖学的に胆管後腹膜穿孔の高危険例である可能性があり,ESTやバルーン排石術には細心の注意を払うべきと考えられた.また,穿孔腔が明らかな場合は手術を念頭に置くべきと思われた.
索引用語 ERCP, 偶発症