セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

B型肝炎-病態・診断2

タイトル 肝P-10:

核酸アナログ製剤投与後に発症したHCC症例の検討

演者 中村 純(川崎医大川崎病院・内科)
共同演者 川中 美和(川崎医大川崎病院・内科), 浦田 矩代(川崎医大川崎病院・内科), 岡 好仁(川崎医大川崎病院・内科), 後藤 大輔(川崎医大川崎病院・内科), 西野 謙(川崎医大川崎病院・内科), 末廣 満彦(川崎医大川崎病院・内科), 河本 博文(川崎医大川崎病院・内科), 山田 剛太郎(川崎医大川崎病院・内科)
抄録 【目的】核酸アナログ製剤(NA)が発売されて以来,B型肝炎に対する治療法は大きく進歩し予後の改善につながっている.特にNA製剤によるHCC発癌抑制効果に関しては,様々な因子が検討され報告されている.今回,当院でNA投与後にHCCを発症した症例について検討を行ったので報告する.
【方法】当院でNA製剤を投与しているB型慢性肝疾患167例[平均年齢49.2歳,男性/女性:122/55,CH/LC:126/41,NAの種類はLamivudine(LMV):95例,LMV+adefovil dipivoxil(ADV):38例,entecavir(ETV):72例,NAの投与期間:中央値5.8年]で,このうちHCCを発症した8例について,年齢,性別,genotype,NAの種類,CH/LC,IFN歴,NA開始時および発癌時のHBsAg,HBeAg,HBV-DNA,ALT,AFP,PIVKA,発癌までの期間,腫瘍径,治療法,再発,予後について検討した.
【成績】NA開始からHCC発症までの期間は,中央値4.1年,HCC発症時の年齢は62.5歳,全例男性であった.GenotypeB/C/不明:1/6/1,NAの種類はLMV:2例,LMV+ADV:1例,ETV:5例(LMVから変更した2例含む)で,CH/LC:4/4,IFNでの治療歴は3例であった.NA開始時は,ALT73.5U/L,全例HBsAg>2000 COIで,HBeAg陽性は2例,HBV-DNA7.2log/mlであった.HCC発症時は,ALT21.5U/L,HBeAgは全例陰性化し,8例中7例がHBV-DNA<2.1未満だったが,その内6例はHBsAg>2000COIと高値であった.AFP5.3,PIVKA67,初発時HCCの腫瘍径は19mmで,単発/多発:6/2,治療法は肝切除/TACE,RFA:6/2,肝切除を施行した症例の組織型は全例高分化から中分化型で,その内1例に再発を認めた.発癌例は非発癌例と比較すると年齢が高い傾向にあり(P=0.07),男性に多かったが(P=0.007),他の因子に差はなかった.
【結論】NA投与後HCCを発症した症例は,非発癌症例と比較して年齢が高く,男性に多かった.NA投与によってHBV-DNAが低値となった症例でも,HBsAgが高値の症例については発癌の可能性を考え厳重に経過観察を行っていく必要がある.
索引用語 核酸アナログ, HCC