セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH2

タイトル 肝P-133:

糖尿病患者の消化器癌発症に関する9年間前向きコーホート研究

演者 織部 淳哉(大分大・消化器内科)
共同演者 本田 浩一(大分大・消化器内科), 岩尾 正雄(大分大・消化器内科), 正 宏樹(大分大・消化器内科), 所 征範(大分大・消化器内科), 吉原 光江(大分大・消化器内科), 西村 順子(大分大・消化器内科), 遠藤 美月(大分大・消化器内科), 清家 正隆(大分大・消化器内科), 村上 和成(大分大・消化器内科), 阿部 信行(内科阿部医院)
抄録 【目的】本邦では糖尿病患者は増加傾向にあるが,糖尿病は合併症が多い疾患であり医学的に問題となっている.なかでも,最近糖尿病が悪性腫瘍合併の危険因子となりうることが報告され注目を集めている.これまで当科では,糖尿病患者と生活習慣病の関連を調べるために,糖尿病クリニック通院患者の長期観察を行ってきた.観察開始して約9年間が経過し,消化器系癌の発症とその危険因子について解析を行った.【方法】対象は2003年度に糖尿病専門クリニックを受診した2型糖尿病患者670名(男性423名,女性247名,平均年齢67.2歳,平均通院期間12年間)で,2004年3月から2013年1月まで経過を追った.そのうち観察開始して5年以内に,通院中断または原因不明の死亡によるdrop out症例やウイルス性肝疾患を除外した30歳から79歳までの437例を選別した.9年間の経過観察中に消化器系の癌を合併した症例を調べ,さらに合併に寄与する因子について解析した.検討項目はすべて観察開始時のデータで,年齢,性別,BMI,HbA1c,AST,ALT,γGTP,脂肪肝の有無,糖尿病罹病期間,糖尿病合併症の有無,高血圧,高脂血症合併の有無,インスリン治療,SU剤投与,ビグアナイド投与の有無について,統計学的検討はχ二乗検定,Logistic回帰分析を用いた.【結果】消化器系癌は20例(4.6%)に認められた.局在は,肝臓4例,食道2例,胃7例,大腸4例,膵臓2例,GIST1例だった.肝癌の発症率は全体の0.9%だった.発癌に寄与する因子について単変量解析を行った結果,γGTP60IU/L以上,飲酒歴あり,年齢70歳以上が抽出された.さらに多変量解析を行った結果,γGTP60IU/L以上(P=0.0003,OR 11.3)が抽出された.糖尿病治療薬と発癌には明らかな関連は認められなかった.【結論】糖尿病患者においてγGTPが消化器系癌合併の予測に有用である可能性が示唆された.
索引用語 糖尿病, コホート研究