セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH3

タイトル 肝P-139:

NASH・肥満関連分子異常を標的とした肝癌再発予測と肝発癌化学予防

演者 清水 雅仁(岐阜大大学院・消化器病態学)
共同演者 森脇 久隆(岐阜大大学院・消化器病態学)
抄録 【目的】インスリン抵抗性,慢性炎症,酸化ストレス等,肥満・糖尿病や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)によって惹起される様々な病態は,肝癌の発癌・進展に深く関与している.今回我々は,これらの分子異常が肝癌治療後再発予測のbiomarkerとして有用であるか,またこれらの分子異常を改善・制御することで肥満・NASHに関連した肝発癌を抑制できるか検討した.【方法】臨床研究として,当大学医学部附属病院および関連施設で根治的治療を行った肝癌(Stage I/II)患者の血清を解析し,治療後早期再発に関与する肥満・糖尿病関連血清因子の検索を行った.また基礎実験として,db/dbマウスを用いた肥満・NASH関連肝発癌モデルに,分岐鎖アミノ酸(BCAA)および緑茶カテキンEGCGをそれぞれ投与し,腫瘍形成抑制効果を検討した.【結果】臨床検体の解析結果として,インスリン抵抗性の出現(HOMA-IR >2.3, P = 0.0252),血清レプチン値の上昇(>5 ng/mL, P = 0.0221),酸化ストレスの亢進(血清d-ROM値 >570 Carr U, P = 0.0036)が,肝癌根治的治療後早期再発の独立した危険因子であることが明らかになった.また動物モデルを用いた検討で,BCAAおよびEGCGが,肝脂肪化の改善,インスリン抵抗性の改善,IGF/IGF-1Rシグナルの抑制,血清レプチンの低下,肝・血清における炎症性サイトカイン(TNF-α,IL-6)の発現抑制,および内臓脂肪の炎症抑制を介して,肥満・NASH関連肝腫瘍形成を抑制することが明らかになった.【結語】肥満・NASH患者に認められるインスリン抵抗性,高レプチン血症,酸化ストレスの亢進は肝癌再発リスクの上昇と関連しており,これらの病態を捉えることで肝発癌・肝癌再発高危険群のスクリーニングが可能になると考えられた.また,肝脂肪化,インスリン抵抗性,IGF/IGF-1Rシグナルの過剰活性化,アディポカインの不均衡(高レプチン血症),慢性炎症状態,酸化ストレスの亢進を改善・制御することで,肥満やNASHに関連した肝発癌が抑制できる可能性が示唆された.
索引用語 NASH, 肝癌