セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH3

タイトル 肝P-140:

非アルコール性脂肪肝炎からの発癌における酸化ストレスの関与についての検討

演者 田中 信悟(札幌医大・4内科)
共同演者 宮西 浩嗣(札幌医大・4内科), 河野 豊(札幌医大・4内科), 保木 寿文(札幌医大・4内科), 久保 智洋(札幌医大・4内科), 高田 弘一(札幌医大・4内科), 林 毅(札幌医大・4内科), 佐藤 勉(札幌医大・4内科), 佐藤 康史(札幌医大・4内科), 小船 雅義(札幌医大・4内科), 瀧本 理修(札幌医大・4内科), 加藤 淳二(札幌医大・4内科)
抄録 【目的】近年,非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景とする肝細胞癌の増加が報告されている.肥満やインスリン抵抗性,鉄過剰に起因する酸化ストレスがNASH発症の原因であることが示されているものの,肝発癌の機序は明らかとなっていない.本検討ではNASHからの発癌に対する酸化ストレスの関与について患者検体を用いて解析を行い,他の臨床病理学的因子を含め発癌危険因子について検討を行った.【方法】2003年2月から2012年1月までに当科にて組織学的に診断されたNASH36例ならびに単純性脂肪肝13例を対象とした.酸化ストレスマーカーとして酸化的DNA傷害度については肝組織内の8-hydroxy-2’-deoxyguanosine(8-OHdG)を免疫染色し定量化することで評価した.脂質過酸化については肝組織内の4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE)を免疫染色し4段階にスコアリングを行った.【成績】NASHからの肝発癌症例(NASH-HCC)は6例であった.肝8-OHdG量はNASH非発癌症例と比較してNASH-HCCが有意に高値であったが(P=0.003),4-HNEについてはNASH非発癌症例とNASH-HCCに差を認めなかった(P=0.423).NASHのうちHCC未発症例と発症例の臨床病理学的因子の比較において多変量解析を施行したところ,高齢(P=0.015)と肝8-OHdG高値(P=0.037)が独立した肝発癌危険因子として抽出された.非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)全症例における肝8-OHdG量と背景因子の相関解析を行ったところ,肝8-OHdG量と空腹時血糖,HOMA-R,CRP,血清フェリチン,組織学的gradeとstage,鉄染色gradeとの間に有意な相関を認めた.【結論】NAFLD症例における肝8-OHdG量はインスリン抵抗性や鉄過剰,炎症の程度を反映しており,各因子を包括した酸化ストレスマーカーであると考えられた.肝8-OHdG量は肝細胞癌発症群で有意に高値であり,これにより肝発癌高危険群を囲い込める可能性が示唆された.
索引用語 NASH, 肝細胞癌