セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

NAFLD・NASH3

タイトル 肝P-141:

脂肪性肝疾患による肝癌:アルコール性及び非アルコール性症例の比較

演者 稲生 実枝(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
共同演者 今井 幸紀(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科), 持田 智(埼玉医大病院・消化器内科・肝臓内科)
抄録 【目的】わが国の肝癌は脂肪性肝疾患に起因する症例が増えており,これらはアルコール性とNAFLDに分類され,後者を基盤とする肝癌が注目されている.しかし当施設では肝硬変症例の24%がアルコール性であり,肝癌の成因としても重要である.脂肪性肝疾患に起因する肝癌をアルコール性とNAFLDに分類し,その臨床像をウイルス性と比較した.【方法と成績】対象は2005-2011年に肝癌と診断されたウイルス性296例,アルコール性47例,NAFLD18例.1.男女比はウイルス性188:108,アルコール性44:3,NAFLD4:14で,ウイルス性に比しアルコール性は男,NAFLDは女が多かった.2.診断年例(平均±SD)はウイルス性68±9,アルコール性66±8,NASH72±8で,アルコール性はNAFLDに比し低年齢であった.3.BMIはウイルス性23±3,アルコール性25±4,NAFLD28±5で,アルコール性とNAFLDはウイルス性に比し高値であった.4.DM合併率はアルコール性43%,NAFLD83%で,ウイルス性24%に比し高率であった.HT,HLには差異が見られなかった.5.肝予備能はCP-C症例がウイルス性7%,アルコール性17%であり,NAFLDでは存在しなかった.静脈瘤破裂はウイルス性3%であり,アルコール性17%,NAFLD11%で高率であった.6.腫瘍の大きさ(mm),多発,門脈及び下大静脈浸潤の頻度は,ウイルス性で38±52,20%,11%,3%,アルコール性で40±45,21%,11%,4%,NAFLDで44±34,17%,17%,6%で,NAFLDで門脈浸潤を併発した症例が多かった.しかし,5cm以上の大型肝癌はウイルス性20%,アルコール性9%,NAFLD17%で,NAFLDとウイルス性で差異は見られなかった.7.2年生存率はウイルス性76%,アルコール性88%,NAFLD83%で差異は認められなかったが,死因はウイルス性で癌死,アルコール性で肝不全死が有意に多かった.【結語】脂肪性肝疾患に起因する肝癌でもアルコール性は男が多く,若年で発癌し,肝不全死が多いのに対して,NAFLDは女に多く,高齢で発症し,肝予備能が良好であるが,癌の門脈浸潤が高率であるなど,病態に差異が認められた.
索引用語 肝細胞癌, 脂肪性肝疾患