抄録 |
【背景】本邦において大腸癌は罹患率,死亡率とも高く早期発見,早期治療が重要な疾患である.近年,様々なスクリーニング法の有用性が報告されているが,大腸癌の診断には大腸内視鏡検査が必須である.しかし,検査に伴う偶発症や死亡例も報告されており苦痛の少ない安全な検査が要求される.【目的】より慎重な前処置・前投薬および挿入が要求される,乳幼児に対する大腸内視鏡検査の安全性を検討する.【対象と方法】当院では小児に対する大腸内視鏡検査は全例内視鏡室において,成人同様に静脈麻酔のみで無透視一人法で行っている.前投薬はジアゼパムあるいはミダゾラム,塩酸ペチジンを使用し全件小児科医の立会いのもと,急変時に対応できる環境で行っている.対象は2009年4月から2011年12月までの約3年間に施行した15歳以下の小児に対する大腸内視鏡検査329件の内,6歳未満の乳幼児に対して施行した大腸内視鏡検査29件(20例)に対しその臨床的検討を行った.【成績】使用したスコープはGIF-XQ260, Q260, H260のいずれかであった.平均年齢は3歳(0歳11か月―5歳),主訴は血便が15例(75%)と最も多く,以下IBD follow,EMR後follow, 再発性腸重積であった.内視鏡診断は若年性ポリープ 8例(40%)と最も多く,以下IBD 3例,非特異的大腸炎 2例, 異常なし 7例で有所見率は65%であった.治療はEMRが8例に行われ1例のみ後出血が疑われ再検査が行なわれた.盲腸到達率 27/29(93.1%)(内2件はS状結腸までの挿入でポリープ切除例). 平均挿入時間 7分(3-14分).偶発症は前処置・前投薬に関するもの含め,穿孔・出血ともなくSpO2低下 2件(酸素投与により改善)のみであった.【結論】乳幼児においても適切な前処置・前投薬および挿入法により大腸内視鏡検査は安全かつ有用であった. 今後も増加が予想されるIBD患者や高齢者に対しても同様に慎重な検査が要求される. |