共同演者 |
石原 知明(四日市消化器病センター), 小倉 英(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 杉本 龍亮(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 宮地 洋英(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 諸岡 留美(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 山本 憲彦(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 藤田 尚己(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 小林 由直(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 岩佐 元雄(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 竹井 謙之(三重大附属病院・消化器・肝臓内科) |
抄録 |
【目的】門脈血栓は慢性肝疾患,特に肝硬変に合併が多く,門脈圧亢進に伴う静脈瘤の破裂,難治性腹水,腸管循環障害,長期的には肝不全のリスクがある.治療適応や治療法について一定の見解はない.当科で門脈血栓と診断した症例を検証し報告する.【対象】慢性肝疾患に門脈血栓合併と診断した12例(2008年1月~2012年12月).年齢中央値67歳,男:女=8:4,HCV:HBV:他=8:1:3(全例肝硬変).Child-Pugh A:B:C=5:6:1.HCC合併:治療歴有:無=5:4:3.発見契機は腹水:2例,食道静脈瘤悪化:1例,定期画像検査:9例.直近3ヶ月以内に脾摘術2例,TAE1例,TAE+RFA2例,RFA1例.12例中11例に治療介入.診断及び治療効果判定はdynamic CTで判断.【成績】全例が肝硬変.直近1年以内にUSで門脈血流速度を4例で測定,うち1例は遠肝性血流,他3例は平均流速10.8cm/秒と低下.直近3ヶ月以内に脾摘術/TAE/RFAを行った症例が50%(6/12).脾摘の2例は血小板20万以上に上昇後発見.診断の前後に上部内視鏡施行は9例,うち4例は食道静脈瘤がRC陽性orF2以上.4例中2例はEVLを行いその後抗凝固療法を施行.他2例は先に抗凝固療法を行い,血栓が消失後に静脈瘤が改善してなかった1例はEVL施行,1例は経過観察.12例中11例に治療,ヘパリン(低分子ヘパリン含む)とワルファリンカリウムを投与:9例,ワルファリンカリウムのみ:2例.1例のみ治療効果なく不変だったが,8例で血栓消失,2例で減少.発症前のD-dimerは中央値0.82(μg/ml),発症時には3.30まで上昇,治療に伴い低下.【結語】肝硬変の経時的D-dimerフォローにて門脈血栓の早期発見につながる可能性が示唆された.定期的画像検査で血栓の早期発見につながり,治療はヘパリンとワルファリンカリウムの投与が多くを占め(9/11),治療効果も良好だった(消失:8/9,減少:1/9).出血性の合併症なし.治療介入で改善した症例が殆どで門脈血栓を契機に重篤な病態に陥った症例はなかった. |