セッション情報 |
ポスターセッション(肝臓学会)
肝循環・門脈圧亢進症1
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タイトル |
肝P-154:増大する肝外門脈瘤における血流動態シミュレーション解析と治療方針の決定
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演者 |
飯室 勇二(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)) |
共同演者 |
鈴村 和大(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)), 大橋 浩一郎(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)), 田中 弘教(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 飯島 尋子(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 西口 修平(兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)), 藤元 治朗(兵庫医大・外科(肝・胆・膵外科)) |
抄録 |
症状や血栓形成のない肝外門脈瘤は経過観察で十分とされている.今回,徐々に増大する血栓形成のない肝外門脈瘤症例に対して門脈血流動態シミュレーション解析を行い,治療方針を決定し,その妥当性を検討した.【方法】肝外門脈瘤症例(75歳,女性)において,腹部USにより門脈瘤および瘤内血流の変化を観察し,造影CT-DICOMデータから流体解析用門脈メッシュモデルを作成し,流体解析ソフト(ANSYS FLUENT)で流体解析を行い,治療方針を決定した.【結果】腹部US上肝外門脈瘤は,脾静脈と上腸間膜静脈合流部のすぐ肝臓側右壁(好発部位)に存在し,開腹・腹腔鏡下手術の既往,および膵胆道系感染性疾患の既往はない.18ヶ月の経過観察中,門脈瘤のサイズは36mm x 32mmから51mm x 37mmと増大した.CT上,門脈瘤は肝十二指腸間膜内に存在し総胆管を右方へ圧排していた.門脈血流動態シミュレーション解析では,瘤内における明らかな門脈血の乱流が認められ,これには脾静脈からの流速の大きいinflowが大きく関与し,門脈瘤壁の一部におけるwall-shear stressが他の部分より大きい状態にあった.これらの所見から,希ではあるが門脈瘤増大による破裂の報告もあり,患者との相談の上,積極的外科治療が選択された.総胆管から門脈瘤を剥離すると,瘤壁は暗赤色調(透明)で非常に脆弱であり,門脈本幹を瘤の上下で十分剥離した後,瘤を含めた同部門脈本幹を切除し,端々で縫合再建した.病理学的検討では,門脈瘤壁の血管内皮細胞は保たれているものの,健常部に比し壁が非常に菲薄化しており,先天性の壁の脆弱性にwall-shear stressなどの後天的因子が加わったものと考えられた.術後経過は良好で,術後門脈血流は現在十分に保たれている.【考察】血栓や症状のない肝外門脈瘤では経過観察で十分であるが,増大傾向があり,将来的破裂の可能性のある症例には積極的治療介入が必要であることが示唆された. |
索引用語 |
肝外門脈瘤, 血流動態解析 |