抄録 |
【目的】肝硬変では耐糖能異常が生じ,特に食後の高血糖を認める.HbA1cは肝硬変では見かけ上低値を示し,Glycated albumin(GA)は,過去約2週間の血糖値,食後血糖値を反映するとされるが,肝硬変ではアルブミン合成能の低下により見かけ上高値を示す.GA/HbA1c ratio(GHR)は脾機能亢進と肝での蛋白合成障害の2病態を反映していると考えられる.既に我々はGHRが肝硬変患者で上昇し,肝予備能の指標となる可能性を報告した.本邦においてHbA1c国際標準化運用が開始され,H25年度より本格的にHbA1c(NGSP)値表記に統一される.今回,HbA1c(NGSP)を用いたGHRと蛋白代謝との関連性,臨床的有用性を明らかにする為,GHRと血清アルブミン(Alb) 値およびBTRとの関連性について解析した.【方法】肝硬変109例(Child-Pugh (C-P) A;56例,C-P B;40例,C-P C;13例)を対象とし,空腹時でHbA1c, GAおよび血清Alb値,BTRを測定した.【成績】GHRはC-P A 3.37±0.51, C-P B 3.98±0.66, C-P C 4.83±0.88と肝硬変の進行に伴い有意に上昇した.肝硬変ではAlb値が4.0g/dl以上でGHR 3.28±0.50と3.5未満であったが,4.0g/dl未満ではGHR3.93±0/78と3.5以上を示した.Alb値が低下するに従いGHRは上昇し,Alb値3.8g/dlで既にGHR3.74となり,Alb値3.3g/dlでGHR4.22と4を超え,Alb値2.9g/dl未満ではGHR4.70を示した.Alb値は4.0g/dl未満では,既にアルブミンの合成能の低下をきたしている可能性が考えられた.一方,GHRを測定しえたCH20例中19例はGHR<3.5であり,BTR4.98±0.85, BCAA465.5±88.2, Tyr94.0±15.3であった.GHR3.5以上の肝硬変症例ではBTR3.31±1.14, BCAA426.2±140.3, Tyr 139.2±36.5であり,GHR3.5未満症例に比し有意にBTRの低下,BCAA低下,Tyr上昇を認めた.【結論】肝硬変患者においてGHRは血清Alb値およびBTRと強い負の相関を示し,HbA1c(NGSP)を用いたGHRで3.5以上を示す症例では,Alb値が4.0g/dl未満およびBTR4.0未満では積極的な治療介入が望ましいと考える. |