セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝不全・栄養療法2

タイトル 肝P-175:

選択的バソプレシンV2-受容体拮抗剤トルバプタンが有効であった難治性腹水の3例

演者 大竹 孝明(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
共同演者 中嶋 駿介(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 前田 重明(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 澤田 康司(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 阿部 真美(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科), 鈴木 康秋(名寄市立総合病院・消化器内科), 長谷部 千登美(旭川赤十字病院・消化器内科), 高後 裕(旭川医大・消化器・血液腫瘍制御内科)
抄録 【背景】腹水貯留は肝硬変患者のQOLを大きく損なう病態である.低Na血症治療薬として既に海外で有用性が実証されている選択的バソプレシンV2-受容体拮抗剤トルバプタン(TLV)は,本邦では心不全による体液貯留を改善する水利尿薬として認可されている.うっ血性心不全を合併した難治性肝性腹水3例に対するTLVの腹水減少効果を検討した.【方法】スピロノラクトン(SPL)およびフロセミド(FUR)不応性かつ治療的腹水穿刺を要する難治性腹水例で,うっ血性心不全を合併している3例に十分なインフォームドコンセントのもとTLVを導入した.通常量の半量7.5mgから導入し,必要に応じて15mgに増量した.【成績】2012年3月~12月の当科外来でフォローされている99名の肝硬変患者において利尿剤投与なし66%.浮腫・腹水に対する内服治療がSPLのみ13%,FURのみ7%,SPL+FUR 13%,その他利尿剤投与1%であった.難治性腹水例の内3例にTLVを併用した.(症例1)80歳女性,C型肝硬変で,心不全,慢性腎不全,肝癌の合併あり.Child-Pugh (C-P)スコア8点,RI肝レセプタ(GSA)肝クリアランス108.8(正常:421±58).FUR 10mg, TLV 7.5mgで,体重2.2kg減,腹水消失.(症例2)82歳女性,非B非C型肝硬変で,心不全,ネフローゼ症候群の合併あり.C-Pスコア9点,GSA 151.1.SPL 75mg, FUR 60mg,アルブミン補充が無効であったが,FUR 40mg, TLV 7.5mgで体重10.5kg減,腹水著明に減少.(症例3)76歳男性,C型肝硬変で,心不全,慢性腎不全,肝癌の合併あり.C-Pスコア10点,SPL 50mg, FUR 20mgの内服,アルブミン補充,FUR 20mg静注に不応であったが,FUR 40mg, TLV 15mgで体重9.3kg減,腹水著明に減少.【結論】うっ血性心不全合併のSPL・FUR不応性肝性腹水に対してTLVは安全かつ有効な治療である.TLVはSPL・FUR不応性腹水治療薬として期待できる.
索引用語 非代償性肝硬変, 腹水