セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝再生・その他

タイトル 肝P-179:

Wnt5a-CaMK2経路による肝幹/前駆細胞の分化調節機構

演者 柿沼 晴(東京医歯大・消化器内科DELIMITER東京医歯大大学院・肝臓病態制御学)
共同演者 幾世橋 佳(東京医歯大・消化器内科), 紙谷 聡英(東海大創造科学技術研究機構・医学部門), 新田 沙由梨(東京医歯大・消化器内科), 東 正新(東京医歯大・消化器内科), 中川 美奈(東京医歯大・消化器内科), 朝比奈 靖浩(東京医歯大・消化器内科DELIMITER東京医歯大大学院・肝臓病態制御学), 坂本 直哉(北海道大・消化器内科), 中内 啓光(東京大医科学研究所・幹細胞治療部門), 渡辺 守(東京医歯大・消化器内科)
抄録 【目的】Non-canonical Wnt経路の代表的なリガンドであるWnt5a及びその下流分子は,様々な臓器で細胞極性及び運動性の制御に関与する.正常肝にWnt5aが発現することは報告されているが,肝臓におけるその生理的,病理的機能は不明である.本研究では,Wnt5aおよびその下流分子の肝幹/前駆細胞の増殖/分化に対する機能を検討した.
【方法】Wnt5a欠損マウスの肝臓について同腹の野生型マウスと比較して解析した. 野生型マウス胎仔肝臓から分離した初代肝幹/前駆細胞を用いてin vitroでWnt5aの機能について解析した.肝前駆細胞株(HPPL)を用いた胆管形成モデルにおいて,Wnt5aおよびその下流分子の機能を解析した.
【成 績】Wnt5a欠損マウスの胎生肝臓では,Notch-1,Notch-2,Sox9の発現レベルが高く,CK19/HNF1β陽性細胞で構成される primitive bile ductal structureの数が有意に増加し,胎仔期の胆管形成が亢進していた.一方で,PCNAやCyclin D1など増殖関連マーカーの発現レベルに有意差を認めなかった.初代肝幹/前駆細胞の培養系において,Wnt5a添加による増殖性の有意差は認められなかった一方で,肝細胞成熟化マーカーの発現量が増加した.反対に,胆管細胞形成を誘導すると胆管細胞型コロニーの形成遅延を認めた.HPPLを用いた胆管形成モデルにおいてWnt5aを添加すると,管腔様構造の数と径は有意に減少し,CK19,HNF1β,MRP3の発現レベルが有意に低下した.Wnt5a下流候補分子のうち,Calmodulin-dependent protein kinase II (CaMKII)は,その活性阻害により胆管細胞型コロニー形成が促進され,MRP3発現レベルが亢進した.さらにWnt5a欠損マウス肝臓におけるCaMKII活性化は野生型より有意に低下していた.
【結論】Wnt5a-CaMKII経路は肝幹/前駆細胞の胆管細胞分化を抑制的に調節していることが示された.
索引用語 胆管細胞, Non-canonical Wnt pathway