セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝再生・その他

タイトル 肝P-180:

肝中皮細胞シートを用いた次世代型再生医療

演者 稲垣 奈都子(東京大分子細胞生物学研究所)
共同演者 稲垣 冬樹(東京大大学院・肝胆膵外科学), 國土 典宏(東京大大学院・肝胆膵外科学), 宮島 篤(東京大分子細胞生物学研究所)
抄録 【目的】原発性肝がんおよび転移性肝がんの治療は外科的切除が有効である.肝内再発に対しても,「繰り返し肝切除」が生存期間の延長や根治を期待しうる方法として広く行われている.しかしながら,「繰り返し肝切除」を行う際,前回手術後の癒着と残存肝の予備能の低下という二つの問題が挙げられる.今回,これらの問題に対する新たな解決策を検討する.
【方法】従来のマウス肝切除モデルでは肝切離面への癒着を再現することが出来ない.そこで,まず肝離断面への癒着を再現するマウス肝切除後癒着モデルの確立を行った.次に「繰り返し肝切除」における問題の解決策として,肝被膜を構成する細胞である肝中皮細胞に着目した.上記のマウス肝切除後癒着モデルに対し,温度応答性培養皿上で培養した肝中皮細胞シートを移植し,癒着防止効果および肝再生促進効果を検討した.対照群には,非貼付群,腹膜中皮細胞シートおよび繊維芽細胞シート貼付群をおいた.
【結果】確立したマウス肝切除後癒着モデルに,肝中皮細胞シートを移植したところ,術後癒着を顕著に防止した.対照群の腹膜中皮細胞シートも癒着をある程度軽減したが,繊維芽細胞シートでは効果は全く認められなかった.更に,肝再生についても検討した.腹膜中皮細胞シートには肝再生促進効果は認められなかったが,肝中皮細胞シートは,Pleiotrophin や Midkine などの肝細胞増殖因子を分泌し,肝切除後の肝細胞の増殖を促進した.また,肝中皮細胞シートは術後のアルブミン産生能の回復を促進したことから,肝機能の早期回復にも繋がることを見いだした.
【結論】肝中皮細胞シートは,術後癒着防止作用および肝再生促進作用を併せ持つことから,「繰り返し肝切除」に伴う諸問題を解決する新たな再生医療となりうることが示された.
索引用語 再生医療, 肝中皮細胞