セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝再生・その他

タイトル 肝P-182:

脳死肝移植の現状打開を目指して ―韓国の現状をreferenceとして

演者 金 守良(神戸朝日病院・消化器科)
共同演者
抄録 【はじめに】2010年の法改正後日本においては脳死肝移植が飛躍的に増加すると考えられたが,この3年間年50例の脳死ドナーにとどまっている.生体肝移植もここ数年間年500例前後で,横ばいもしくは減少傾向にある.脳死ドナー数の伸び悩みの最大の要因としては,法改正はあったものの脳死が人の死であるという議論=「脳死論議」と社会的合意の不足が考えられる.一方海を隔てた韓国では脳死肝移植と生体肝移植(括弧内)は2008年233(950)例,2009年236(1019)例,2010年242(1066)例,2011年313(1210)例,2012年363(1250)例と脳死,生体肝移植とも着実に増加している.人口比からみると韓国は日本に比べて生体肝移植は約5倍,脳死肝移植は約20倍多いと考えらえる.その現状を踏まえ日本の脳死肝移植の現状打開の方法を探ってみたい.【韓国の現状をもたらした要因】韓国においても脳死論議が日本と比較して活発だったとは言い難いが,脳死移植の増加した要因として人口の3分の1がキリスト教徒であり,その博愛主義によるドーネーションの増加や著名なプロボクサーや宗教家が脳死や死に際して臓器提供したことで,死(脳死)に際して臓器提供を是認する社会的風潮が高まったことが挙げられている.【日本での現状打開に向けて】日本での脳死肝移植の打開に向けては発想の転換と具体的な行動が求められる.第一に脳死論議と社会的合意に向けての焦点を絞ることである.国民的合意というあいまいな概念ではなく,まず医師会,看護協会,薬剤師会などの医療団体,そして何よりも前に消化器病学会,肝臓学会を対象とした本音に立った脳死論議と合意が求められる.第二は脳死移植の社会的風潮の高まりである.そのためには著名人(政界,芸能界,スポーツ界)の脳死時の臓器提供の具体例が出ること,第三は博愛主義に立つキリスト教を含む宗教団体や社会団体への働きかけである.【まとめ】日本の脳死肝移植の現状の打開のためには,韓国の脳死肝移植の歴史と現状を参考にして,従来の発想を大胆に転換した新しい試みこそが求められる.
索引用語 脳死肝移植, 韓国