セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

肝再生・その他

タイトル 肝P-184:

肝疾患における酸化ストレスとオートファジーの関連

演者 日浦 政明(産業医大・3内科)
共同演者 大江 晋司(産業医大・3内科), 宮川 恒一郎(産業医大・3内科), 本間 雄一(産業医大・3内科), 原田 大(産業医大・3内科)
抄録 【目的】さまざまな肝疾患で小胞体ストレスから酸化ストレスが惹起されることが病態進展に深く関与している.本研究では各種肝疾患における酸化ストレスと,それによって生じた異常蛋白の分解機構であるオートファジーとMallory-Denk body(MDB)の形成や細胞増殖の関係を検討し,各疾患の病態の違いを解明することを目的とした.【方法】非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)14例,C型慢性肝炎(HCV)14例,B型慢性肝炎(HBV)7例の肝生検組織に以下の免疫染色を行った.抗体は酸化ストレス(HNE-J-2), 異常蛋白の蓄積(ユビキチン),MDB(p62, keratin 8,keratin 18),オートファジー(LC3),細胞増殖(Ki67)を用い,染色の強さや局在をスコアリングし,血液検査での肝機能と併せて評価した.さらにこれらの関連を細胞レベルで検討した.【成績】患者背景では各疾患における血液検査所見に有意差は認めなかった.免疫染色のスコアリングではHBVでKi67の有意な発現亢進を認めたが,他の染色では差は認めなかった.NAFLDとHCVではMDBは酸化ストレスの強い領域に存在し,細胞レベルの検討ではMDBの形成された肝細胞では酸化ストレスが回避されていた.また,これら両疾患では凝集体を形成した細胞ではいずれもK8/18の発現比率が上昇していた.HBVでは酸化ストレスが強い領域にK18が強く発現していたがK8の発現は弱く,凝集体は形成しなかった.また,NAFLDとHCVでは酸化ストレスの強い領域に一致してオートファジーが亢進している症例と,一致しない症例があり,一致した症例ではトランスアミナーゼが有意に低かった.【結論】いずれの疾患においてもMDBの形成には酸化ストレスが関与し,MDBが凝集体を形成するためにはK8/18比が重要と考えられた.MDBは細胞レベルで肝細胞を保護し,オートファジーは酸化ストレスに反応して亢進している場合には肝障害の改善に働くものと考えられた.NAFLDとHCVにおいては酸化ストレスが疾患の本質であり,その回避機構においても非常に類似した病態を呈していた.
索引用語 酸化ストレス, オートファジー