セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌1

タイトル 肝P-185:

肝細胞癌の非癌部肝組織におけるAKR1B10の発現

演者 廿楽 裕徳(順天堂大静岡病院・消化器内科)
共同演者 玄田 拓哉(順天堂大静岡病院・消化器内科), 佐藤 俊輔(順天堂大静岡病院・消化器内科), 市田 隆文(順天堂大静岡病院・消化器内科)
抄録 【背景】AKR1B10は肝細胞癌での発現が報告されてきた分子で,HSP70やGPC3と同様に高分化癌の段階で発現が認められる.しかし近年我々は,C型慢性肝炎の肝内にAKR1B10発現が認められる例があり,この発現が肝発癌リスクを反映することを報告してきた(Liver Int 2012).すなわち,発癌母地である慢性障害肝の段階から発現する分子があり,これが肝発癌分子機構に関与している可能性を見出した.本検討では肝発癌初期に発現する分子であるAKR1B10,HSP70,GPC3の非癌部肝組織における発現を解析した.【方法】当院にて切除された61例の肝細胞癌とその非癌部肝組織を用いて,AKR1B10,HSP70,GPC3の免疫染色を行い,その発現量を画像解析ソフトで陽性面積率として定量化した.対照とした正常肝組織は,転移性肝癌切除例の背景肝組織から得た.【結果】HSP70とGPC3は正常肝組織と非癌部肝組織では発現が認められず(<1%),肝細胞癌組織でのみ発現亢進が認められた(HSP70: 24.5%,GPC3: 7.21%).一方,AKR1B10は,正常肝組織では発現が認められないものの(<1%),非癌部肝組織(2.56%),肝細胞癌組織(56.5%)と多段階的な発現亢進が認められた(P<0.001).非癌部肝組織におけるAKR1B10発現に寄与する因子を多変量解析で検討した結果,肝脂肪化のみが有意な要因であり,背景肝におけるAKR1B10と肝脂肪化には正の相関関係が認められた(r=0.40, P=0.001).肝障害の成因別では非B非C例でAKR1B10発現が上昇する傾向が認められたが,統計学的な有意差は認めなかった.肝線維化ステージでは,線維化進展例と非進展例の間にAKR1B10発現に差は認めなかった.【結語】肝発癌初期に発現する分子であるAKR1B10,HSP70,GPC3の中で,AKR1B10のみが背景肝からの多段階的な発現亢進が認められた.この結果は,AKR1B10発現が肝発癌過程の極めて初期の段階に関与している可能性を示していると考えられた.また,AKR1B10発現量と肝脂肪化の関連から,何らかの代謝異常が肝発癌に影響を与えていることが示唆された.
索引用語 AKR1B10, 肝細胞癌