セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌1

タイトル 肝P-186:

肝細胞癌におけるp300/CBPの機能に関する検討

演者 稲垣 悠二(三重大大学院・消化器内科学)
共同演者 白木 克哉(三重大大学院・消化器内科学), 杉本 和史(三重大大学院・消化器内科学), 爲田 雅彦(三重大大学院・消化器内科学), 竹井 謙之(三重大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】がん薬物療法の新しい分子標的として,ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)が注目を集めている.ヌクレオソームを構成するタンパクであるヒストンの特定リジン残基がアセチル化されると,転写が活性化されると考えられている.ヒストン分子中特定リジン残基のアセチル化はヒストンアセチル化酵素(HAT)とHDACにより代謝回転されている.p300とCBPは転写のコアクチベーターであり,各種遺伝子の転写の活性化に関与している.また,p300/CBPはHAT活性をもっており,ヒストンをアセチル化することでクロマチン構造をほぐし,転写を活性化させる.そこで,今回肝癌におけるp300/CBPの機能を明らかにする事を目的とした.【方法】p300/CBPの特異的阻害剤としてC646を使用した.各種肝癌細胞を用い,C646のHAT活性,生存率,アポトーシス,invasion,migrationへの影響を検討した.また,抗癌剤やTRAIL併用効果も検討した.またC646の分子病態への影響をreal-time PCRやウエスタンブロッティングを用いて解析した.【結果】C646は,濃度依存的にヒストンH3を低下させていた.C646は,50μM以上で濃度依存的に生存率を低下させた.HepG2のほうが低下率が高かった.C646と抗癌剤CDDP,5-FUとの併用では抗癌剤の増強効果は軽度であったが,TRAILの効果を相乗的に増強した.その効果の分子生物学的機序を解明するため,real-time PCR array にて検討するとCD40L, FasL, TNF, Bcl-2の低下が顕著であった.WBではアポトーシス抑制分子XIAP,survivinの発現を低下させた.C646は,肝癌細胞のmigration. invasion を濃度依存的に抑制した.Real-time PCR arrayによりmatrixおよびadhesionに関連する分子の遺伝子発現を検討したところ,各種MMP, TIMP, Integrinの発現の変化が確認された.【結語】p300/CBPは肝癌の発育や増殖に重要な役割をしていると考えられる.p300/CBPを制御することにより肝細胞癌の進展や発現をコントロールできる可能性がある.また抗癌剤や免疫療法の作用を増強する可能性がある.
索引用語 p300/CBP, 肝癌