セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌1

タイトル 肝P-188:

HIF-1αの活性化を介した銅の肝発癌への関与

演者 樋本 尚志(香川大附属病院・総合診療部)
共同演者 谷 丈二(香川大附属病院・消化器・神経内科), 三好 久昭(香川大附属病院・消化器・神経内科), 米山 弘人(香川大附属病院・消化器・神経内科), 鈴木 康之(香川大・消化器外科), 正木 勉(香川大附属病院・消化器・神経内科)
抄録 【目的】hypoxia-inducible factor-1 (HIF-1α) が発癌に関与し,銅 (Cu) や亜鉛 (Zn) がその発現を促進または抑制することが報告されている.今回,慢性肝炎 (CH), 肝硬変 (LC) および肝細胞癌 (HCC) 患者の血清HIF-1α値および肝組織におけるHIF-1αの発現を解析し,これらの微量元素と肝発癌との関連について検討した.【方法】対象はCH: 9例,LC: 5例,HCC:12例で,そのうちCH: 6例,LC: 5例,HCC: 5例から肝組織が採取された.比較対照群として9例の健常者 (NHC) を登録した.対象患者における血清中のHIF-1α値はELISA 法によって,肝組織におけるHIF-1αの発現は免疫組織化学法によってそれぞれ解析した.【成績】各群における血清HIF-1α値は,NHC:3.52±1.15 ng/ml,CH:5.09±1.22 ng/ml,LC:5.22±1.77 ng/ml,HCC:6.47±1.57 ng/ml であり, HCC群ではCH群と比較して有意に高かった (p=0.0344) .血清Cu値は,NHC : 100±18 μg/dl, CH :108±15μg/dl, LC : 114±24 μg/dl, HCC : 137±24 μg/dlであり,HCC群における血清Cu値はCHおよびLC群のそれと比較して有意に高値を示した (p=0.0030, p=0.0471).また,対象患者における血清HIF-1α値とCu値との間には有意な正の相関が認められた (r=0.425, p=0.0137).一方,血清Zn値は,NHC : 74±4 μg/dl, CH : 72±9μg/dl, LC : 66±10 μg/dl, HCC : 65±14 μg/dlであり,線維化が進行するに従って低下する傾向にあったが,LC群とHCC群の血清Zn値はほぼ同等であった.血清HIF-1α値とZn値との間には有意な相関は認められなかった.肝組織におけるHIF-1αの発現は,HCC 5例のうち2例 (40%) に認められたが,CHやLC患者にはいずれも発現が認められなかった.興味深いことに,HCCにおけるHIF-1αの発現は,主として壊死を起こしている周辺の癌細胞に観察された.【結論】肝組織におけるCuの蓄積がtriggerとなってHIF-1αが活性化され,肝発癌に関与することが示唆された.
索引用語 肝細胞癌, HIF-1α