セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌2

タイトル 肝P-191:

A disintegrin and metalloprotease 21発現は肝細胞癌の細胞運動に関与し術後再発に影響を与える

演者 高村 昌昭(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 玄田 拓哉(順天堂大静岡病院・消化器内科), 山際 訓(新潟大大学院・消化器内科学), 松田 康伸(新潟大・保健学科検査技術科学), 若井 俊文(新潟大大学院・消化器・一般外科学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】我々はin vitroで高運動性の肝細胞癌培養細胞株がin vivoで高率に肝内転移することから,細胞運動が肝細胞癌の生物学的悪性度を考える上で重要であることを報告してきた.今回,細胞運動に関与していることが報告されている分子であるa disintegrin and metalloprotease (ADAM)ファミリーの肝細胞癌における臨床的意義について検討した.【方法】プロテアーゼ活性を有する12種類のADAMファミリー (8,9,10,12,15,17,19,20,21,28,30,33) について,高運動性高転移性の肝細胞癌株 KYN-2 と低運動性低転移性肝細胞癌株 PLC/PRF/5 と HepG2 に大腸癌肝転移症例の非腫瘍部肝組織を加え,リアルタイムPCRで発現を確認した.KYN-2株で発現が高いADAMファミリーの中でADAM21に注目し,KYN-2株のADAM21 siRNA安定発現株を作製し浸潤・遊走アッセイを行った.ADAM21マウスモノクローナル抗体を作製し,術前ミラノ基準を満たした初発肝細胞癌切除例77例を用いてその発現と臨床病理学的因子との検討を行った.【成績】リアルタイムPCRにおいて,KYN-2株で高い発現を示したものはADAM17,21であった.ADAM21 siRNA安定発現KYN-2株は,control株に比し浸潤・遊走能の有意な低下を認めた.切除例において陽性例は12例 (15.6%) であった.ADAM21発現と腫瘍個数に有意な相関関係を認めた(p=0.032).ADAM21陽性例では脈管浸潤陽性例が多い傾向にあった(p=0.085).ADAM21陽性例では陰性例に比し無再発生存率が有意に不良であった(p=0.041).多変量解析では複数腫瘍例(RR 2.52,p=0.006),ADAM21発現陽性例(RR 2.96,p=0.010)が独立した再発危険因子であった.【結論】ADAM21は肝細胞癌の細胞運動に関与しており,その発現は肝細胞癌の切除後再発予測因子としての有用性が示唆された.
索引用語 肝細胞癌, ADAM