セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-発癌2

タイトル 肝P-192:

肝癌で高発現しているガンキリンはFIH-1を介したHIF-1活性を制御し,VEGFA産生を増加させ,肝血管増生,肝血管性腫瘍の形成を誘発する.

演者 東辻 宏明(京都大大学院・医学研究科)
共同演者 東辻 久子(京都大大学院・医学研究科)
抄録 (緒論)肝癌で発現が亢進するがんタンパク質で,7つのアンキリンリピートよりなるガンキリンは多くのタンパク質と相互作用し,種々の活性を有する.Rb-E2F1経路を活性化したり,p53-MDM2の活性化を促進する.そこで肝細胞で特異的にガンキリンを高発現するトランスジェニックマウスを作製し,ガンキリンによる生体内での発癌メカニズムを解析した.(方法)(1)肝細胞特異的ガンキリン高発現トランスジェニックマウスの作製と腫瘍形成.(2)腫瘍性病変の組織型の解析.(3)DENによる化学発癌モデルとガンキリン高発現癌細胞の皮下腫瘍モデルにおける血管増生.(4)ガンキリン高発現によるVEGFA発現への影響.(5)ガンキリン過剰発現によるHIF-1(低酸素誘導因子1)活性の制御機序の解析.(6)ガンキリンとFIH-1(低酸素誘導因子1阻害因子)との結合とHIF-1からのsequestration.(結果)1.予想外にもガンキリンのレベルが1.7倍に高発現したマウスは肝癌ではなく,血管腫/血管肉腫を発症した.2.トランスジェニックマウスでのDEN化学発癌とガンキリン高発現マウス肝癌細胞株の皮下腫瘍移植をおこない,血管系細胞の異常増殖と血管新生因子であるVEGFA mRNAの発現亢進を認めた.3.VEGFAの発現レベルは低酸素で誘導される転写因子HIF-1により制御されている.ガンキリンは1%や20%ではなく3%低酸素存在下で低酸素応答エレメントの転写活性を促進し,これは,ガンキリンがFIH-1を介したHIF-1による転写活性を促進することによることが示唆された.4.この機序が3%酸素存在下ではガンキリンがFIH-1とHIF-1の複合体形成を抑制することによることが示された.(結論)ガンキリン肝細胞特異的過剰発現トランスジェニックマウスはFIH-1を介してHIF-1活性さらに,VEGFA発現を亢進させ,肝血管性病変(肝血管腫・肝血管肉腫)を誘発することが示唆された.
索引用語 肝血管腫, 低酸素誘導因子1