抄録 |
【目的】慢性肝疾患に発生する肝内胆管癌(ICC)と混合型肝癌(cHC-CC)はしばしば細胆管癌(BDuC)成分を含む. BDuCとの病理組織学的鑑別を要する病変として,胆管細胞腺腫(BDA)と細胆管反応(DR)が挙げられる.私どもは, ICCやcHC-CCでは細胞老化からのエスケープ/バイパスに働くポリコーム群蛋白EZH2発現亢進がみられること, DRでは細胞老化マーカーp16INK4A発現が出現することを報告してきた. 今回, BDuC成分におけるEZH2, p16INK4A発現とその意義を, BDA, DRでの発現と対比して検討した. 【方法】対象はBDuC成分を含むcHC-CCとICC 33例(M/F=20/13; 肝硬変20例, ウイルス性肝炎18例), BDA7例(M/F=6/1;肝硬変2例, ウイルス性肝炎1例).ホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて免疫組織化学的にEZH2, p16INK4A発現を検出した.【成績】cHC-CC とICCでは, 全例にEZH2発現を認めた. また4例(12%)でp16INK4A発現の広範発現をみた.他の症例ではp16INK4A発現はほぼ陰性であった. BDAでは, EZH2発現はみられず, 4例(57%)で広範なp16INK4A発現を認めた.癌結節周囲には26例 (79%)にDRが認められた. DRは全例EZH2陰性, p16INK4陽性を示した. ICC とcHC-CCの18例(55%)では, 癌結節とDRの境界が, p16INK4とEZH2発現の相補的染色像によって明瞭に区分された. 【結論】BDA の約半数はDR と同様に細胞老化形質を示すこと, BDuC成分では細胞老化からのエスケープ/バイパスが生じていること, p16INK4AとEZH2発現の染色態度は, BDuC成分とBDA, DRの鑑別に有用であることが示唆された. |