セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-診断1

タイトル 肝P-198:

急速に進行した対麻痺を呈した肝細胞癌の症例

演者 田中 匡実(国立災害医療センター)
共同演者 島田 佑輔(国立災害医療センター), 林 昌武(国立災害医療センター), 上市 英雄(国立災害医療センター), 川村 紀夫(国立災害医療センター), 平田 啓一(国立災害医療センター)
抄録 【症例】61歳,男性.【現病歴】2010年秋にS2/3とS6/7に肝細胞癌が発見され,TACEとRFAを施行された.その後,2011年秋にS6/7の再発した肝細胞癌に対して肝後区域切除術が施行された.退院後は外来でフォローされていたが,2012年夏にS2/3の肝細胞癌の再発,門脈塞栓が出現したため放射線治療を行っていた.経過中に肺転移が出現するなどコントロール不良となったためソラフェニブへ変更する予定となった.しかしながら,10月になり急に両下肢の脱力が出現したために緊急入院となった.【経過】入院時に胸椎単純MRIを撮影したところ,椎体後方への占拠性病変を認め胸髄への転移による変化が疑われたが確定はできなかった.その後,胸椎造影CTを撮影したところ,胸髄が髄外の占拠性病変の圧迫により変形していたが,肝細胞癌の胸髄転移とは断定できず,急性硬膜外血腫の可能性もあると考えられた.さらなる精査のため,胸椎造影MRIを撮影したところ髄外病変は造影効果を認めずHCCの転移としては合致せず,胸髄の限局性の硬膜外血腫の可能性が高いと診断され整形外科にて手術予定となった.しかしながら急速に肝機能障害が進行したために手術は中止となった.その後状態は悪化し肝不全のため患者は死亡した.【病理解剖】脊髄に腫瘍性病変は認めず,胸髄は壊死組織に置換されていた.また,脊髄動脈内に腫瘍塞栓を認めた.以上より,脊髄動脈の腫瘍塞栓による脊髄梗塞の診断となった.【結論】今回我々は肝細胞癌による脊髄動脈の腫瘍塞栓による脊髄梗塞をきたし,急速に対麻痺を認めた症例を経験した.このような症例報告は極めて稀であり,PubMedで検索する限りではこのような報告はなかった.おそらく画像診断は非常に困難であり病理解剖を実施しなければ診断がつかないためだろうと考えられる.今後同様の症例を経験した際には脊髄動脈の腫瘍塞栓による脊髄梗塞も鑑別にいれなければならいないと考えられた.
索引用語 脊髄梗塞, 腫瘍塞栓