セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-局所治療2

タイトル 肝P-216:

当院におけるバルーン閉塞下肝動脈化学塞栓療法(balloon occluded TACE:B-TACE)の現況

演者 森田 慎一(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科)
共同演者 荒井 保明(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科), 富松 浩隆(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科), 菅原 俊祐(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科), 岡本 大佑(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科), 曽根 美雪(国立がん研究センター中央病院・放射線診断科), 坂本 康成(国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科), 上野 秀樹(国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科), 森実 千種(国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科), 奥坂 拓志(国立がん研究センター中央病院・肝胆膵内科)
抄録 【目的】B-TACEは肝癌結節へのlipiodol集積が従来TACE(conventional TACE:C-TACE)よりも増強されると報告され,当院ではC-TACEでの病変制御困難例に対し施行している.B-TACEの有効性,安全性につき検討する.【方法】対象は2012年1~12月,当院にて肝動脈経由に治療を行った肝細胞癌症例278例中,B-TACE 21例,C-TACE 169例.全例でマイクロカテーテルにて腫瘍血管を選択し,B-TACEではバルーン閉塞を行い,epirubicinとlipiodolの混合液を動注後,gelatin spongeにて塞栓した.患者背景,手技内容,標的結節治療効果度(treatment effect: TE),有害事象,血管障害度につき後ろ向きに比較検討した.【成績】B-TACE群では塞栓領域は広範囲な傾向があり,lipiodol,epirubicinの使用量は多かった.TEは両群に有意差を認めなかった.有害事象はG3以上のALT異常がB-TACE群で多かった.また,反復してTACEを施行したB-TACE 16例,C-TACE 93例,さらにepirubicin未使用でバルーン閉塞下塞栓療法を施行した6例で,血管障害の程度(狭窄,閉塞)をDSA像にて比較したところ,B-TACE群で有意に多く,そのうち6例(28%)で肝動脈閉塞を来した.いずれもTACE前治療歴のある症例であった.【結論】C-TACE治療困難例に対して施行したB-TACEは,肝癌結節にlipiodolが多く集積し,適切な症例を選択すれば有用な治療法となりうる.しかし血管障害の頻度が高く,再治療が困難となることがある.その原因としてB-TACEではepirubicinによる血管障害作用を増強する可能性が示唆された.特にTACE前治療歴のある症例に顕著であった.今後も症例を集積し,長期的効果や適切な使用薬剤,使用量の検討が必要である.
索引用語 Balloon occluded TACE, 血管障害