セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-分子標的治療3

タイトル 肝P-242:

Sorafenibにより惹起される放射線性胃腸炎の増悪

演者 谷口 博順(日本赤十字社医療センター・消化器内科)
共同演者 吉田 英雄(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 佐藤 達也(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 島 佑介(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 中田 史子(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 白田 龍之介(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 秋山 大(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 伊藤 由紀子(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 山本 信三(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 光野 雄三(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 中田 良(日本赤十字社医療センター・消化器内科), 高本 健史(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科), 橋本 拓哉(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科), 尾形 哲(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科), 井上 和人(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科), 丸山 嘉一(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科), 幕内 雅敏(日本赤十字社医療センター・肝胆膵外科)
抄録 【背景】当施設では進行肝細胞癌への集学的治療の後にSorafenib投与を行っている例が多いがSorafenibが放射線性胃炎の増悪により出血を惹起する可能性につき報告する.

【対象】 2009年5月~2013年2月に当科でSorafenib投与した進行肝細胞癌患者21例

【成績】4例で重篤な消化管出血を認めたが,全員腹部への放射線治療歴があった.1例目ではVp3へのRadiation後半年してSorafenib投与開始後GAVEからの出血を認め,APCの焼灼にて止血が得られた. 2例目では横隔膜直下のHCCの転移巣に対して定位放射線治療後半年してSorafenib開始後黒色便出現,潰瘍およびGAVEをみとめAPCにて止血は得られたが,状態悪化により1ヵ月後死亡.4例目では肺転移に対するSorafenib開始時は特に出血を認めなかったものの,その後のVpへのradiation後に放射線性胃炎からの出血生じ,APCにて止血,その後はBSCとなった.

3例目ではVp4とVv3に対し5FU-IFN動注とRadiationを併用時に潰瘍およびGAVEの発生を認め,一時治癒したものの肺転移にSorafenibを開始したところUV・UDの再発,Clippingにて止血後,瘢痕による幽門狭窄をきたした.胃空腸吻合術を施行後低用量からSorafenib再開・漸増した後は特に出血も生じず,追加治療が可能となった.

【考察】放射線性胃炎は放射線治療開始後3-6ヶ月程度で生じることが多いとされるが,血管内皮の障害・組織の浮腫での血流障害が原因であり,Sorafenibが増悪させる可能性がある.通過障害をきたした場合,Bypass術等の施行により食事摂取再開や再治療も可能な例もあり,検討すべきと考えられた.

【結論】Sorafenib投与が放射性胃腸炎を増悪させる可能性があり,腹部への放射線治療歴のある患者に対する投与では,慎重な判断が必要.出血に対してはAPC凝固や外科的手術なども含めた対処が必要である.
索引用語 肝細胞癌, Sorafenib