セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

原発性肝癌-疫学

タイトル 肝P-244:

当院で過去5年に経験した肝細胞癌破裂11症例の背景・予後についての検討

演者 島田 祐輔(国立災害医療センター)
共同演者 田中 匡実(国立災害医療センター), 林 昌武(国立災害医療センター), 原田 舞子(国立災害医療センター), 佐々木 善浩(国立災害医療センター), 上市 英雄(国立災害医療センター), 川村 紀夫(国立災害医療センター), 平田 啓一(国立災害医療センター)
抄録 【背景・目的】 肝細胞癌はサーベイランスの充実により早期の発見・治療が可能となってきている.しかし無治療のまま進行し,破裂によって発見される症例も存在する.破裂症例の患者背景や予後を分析し,破裂予防および生命予後を改善するための対策を検討した.
【対象】 当科で2008年4月からの5年間に経験した肝細胞癌破裂の11症例(男性7例:女性4例).
【方法】 各症例の基礎疾患・肝機能・治療内容といった患者背景を分類し,破裂後生存日数との相関性を比較した.
【結果】 全例で緊急肝動脈塞栓術での止血を行っている.肝細胞癌の原因としては,C型肝炎が4例,アルコール性肝障害が4例,NASHが4例,原因不明が1例(重複あり)となり,肝細胞癌全症例と比較して非B非C型肝硬変を背景としているものが多かった.また,退院時肝予備能と腫瘍径で破裂後生存日数との強い相関性が見られた.1年生存率は27%であった.生存例ではいずれも後日肝臓切除術を行っており,腹膜播種も指摘されていない.
【考察】 肝細胞癌破裂はアルコール性肝障害やNASHのような生活習慣に起因する肝硬変を背景とするものが多く,適切な医療の介入がなされないまま癌化し破裂を来たしていた.破裂後の生命予後は残存肝機能に依る面が大きい.塞栓術後の肝機能を左右する点で腫瘍径も予後に影響を与えると思われる.一方で,破裂時の肝予備能は予後を必ずしも反映せず,破裂時は積極的な塞栓術を行うことで救命率が上がる.
【結論】 破裂を未然に防ぐには前癌病変である肝硬変の早期発見が重要であり,ウイルス性肝炎のみならず大量飲酒歴や肥満・糖尿病等,生活習慣から肝硬変を合併しうる患者でも腹部超音波検査や血液検査で定期的な経過観察を行い,異常の早期発見に努めることが望ましい.破裂した際には緊急処置として塞栓術を行い,集学的治療で肝機能を改善させた上で外科的切除を行うことが予後改善に繋がる.
索引用語 肝細胞癌破裂, 原発性肝癌