セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

薬物・アルコール性肝疾患

タイトル 肝P-268:

オキサリプラチンによる肝障害とその合併症についての検討

演者 小林 由夏(立川綜合病院・消化器センター消化器内科)
共同演者 杉谷 想一(立川綜合病院・消化器センター消化器内科), 野本 実(新潟大・3内科), 上野 亜矢(立川綜合病院・消化器センター消化器内科), 藤原 真一(立川綜合病院・消化器センター消化器内科), 大関 康志(立川綜合病院・消化器センター消化器内科), 飯利 孝雄(立川綜合病院・消化器センター消化器内科)
抄録 【はじめに】オキサリプラチン(以下OHP)は,大腸がん化学療法のkey drugの一つである.我々はこれまでにOHP併用化学療法後に高頻度に脾腫が出現することや肝切除後の組織に門脈の狭小化や閉塞が見られることを報告してきた.その後食道静脈瘤出現例,術後肝不全例を経験したため考察を加えて報告する.【方法】当院でのOHP併用化学療法施行症例ついて,治療前後の脾腫の有無,食道静脈拡張の有無を検討した.OHP併用治療後に肝切除を行った症例に関しては,背景肝の組織を確認した.【結果】2006年3月~2012年12月までにOHPを340mg/m2以上投与し,治療前後で腹部CTの評価ができた症例は73例, 化学療法後に肝切除を行った症例は21例であった.治療後の脾臓体積を治療前の脾臓体積で割ったsplenic index(以下SI)は,1.2以上38例,52.1%,SI 1.5以上15例,20.5%であった.治療前脾臓体積の平均値は196.32cm3,治療後脾臓体積の平均値は243.96cm3で,P値は0.0001以下と脾臓は有意に増大していた.OHP投与後に上部内視鏡を施行した症例は42例,57.5%であり,4例に食道静脈拡張を認めた.1例ではRC-sign陽性の静脈瘤を認めており,内視鏡的食道静脈瘤硬化療法が必要であった.静脈瘤の出現した症例の肝切除標本の病理では,軽度の再生性変化が見られ,門脈の狭小化と閉塞を認めた.1例で術後肝不全をきたし,背景肝では中心静脈からzone2, 3にかけてうっ血が著明で類洞の拡張や肝細胞索の萎縮がみられた.【考察】OHP併用化学療法後に脾腫や食道静脈瘤をきたす症例が報告されており,とくに長期生存例に対して腹部エコーによる門脈圧計測や上部内視鏡の定期検査が必要である.【結語】OHPは門脈圧亢進症を惹起する.肝切除症例において,背景肝の類洞障害を検討することが長期経過観察に際して有用である.
索引用語 オキサリプラチン, 門脈圧亢進症