セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

生化学・分子生物学

タイトル 肝P-271:

マイクロアレイを用いた正常肝臓の加齢に伴う遺伝子発現とDNAメチル化の解析

演者 爲田 雅彦(三重大附属病院・消化器・肝臓内科DELIMITER三重大大学院・臨床検査医学)
共同演者 白木 克哉(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 杉本 和史(三重大附属病院・消化器・肝臓内科DELIMITER三重大大学院・臨床検査医学), 山本 憲彦(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 稲垣 悠二(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 竹井 謙之(三重大附属病院・消化器・肝臓内科), 登 勉(三重大大学院・臨床検査医学)
抄録 【目的】肝臓において加齢に伴い肝炎ウィルス治療の抵抗性を来すことや発癌率が上昇する傾向にあることが知られている.これらの原因として様々な遺伝子,蛋白の発現が変化していることが考えられる.その機序としては遺伝子変異や染色体不安定性などといったジェネティックな変化のみならず,DNAメチル化などのエピジェネティックな変化が存在することが報告されている.今回,我々は肝臓の加齢に伴い遺伝子発現とメチル化パターンに変化を認めた遺伝子についてマイクロアレイを用いて網羅的に解析し,肝加齢を制御する原因遺伝子について検討を行った.【方法】正常肝臓の組織として生体肝移植ドナー9名の肝臓を使用した.対象は20歳代4名,50歳代5名であった.遺伝子発現は肝臓組織より抽出したmRNAをAffymetrix社のGeneChipを使用し解析した.DNAメチル化は肝臓組織より抽出したgenome DNAをIllumina社のInfinium HumanMethylation450 BeadChipを使用し解析した.それらの結果を統計学的に評価した.【成績】GeneChipにて検出された28042個の遺伝子について,20歳代,50歳代のサンプル間で有意差検定を行った結果,292個の遺伝子に有意差を認めた.メチレーションアレイで検出された48万カ所のメチル化サイトのうち,2群間で有意な差を持つメチル化サイトは10万カ所認められた.遺伝子発現とメチル化双方に有意な差を持つ遺伝子は86個認められた.その内訳としてTBX1,PTK6,MAFA,HDAC’等のアポトーシスや細胞増殖に関連した遺伝子,CXCR7,KLF11,AGRN等の肝細胞癌との関連が指摘されている遺伝子が認められた.またWntシグナルと関連したFZD7も認められた.【結論】遺伝子発現とDNAメチル化双方に変化を認めた遺伝子にはアポトーシスや細胞増殖に関連したものや,加齢と関連が指摘されているWntシグナルに関連した遺伝子も認めた.これらの遺伝子が肝臓の加齢に関与していることが示唆された.
索引用語 DNAメチル化, 加齢