セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

生化学・分子生物学

タイトル 肝P-273:

顕性黄疸にて発症しABCB11遺伝子変異により診断しえた妊娠性肝内胆汁うっ滞症の1例

演者 阿部 寛幸(新潟大大学院・消化器内科学)
共同演者 上村 顕也(新潟大大学院・消化器内科学), 眞水 麻以子(新潟大大学院・消化器内科学), 高橋 祥史(新潟大大学院・消化器内科学), 水野 研一(新潟大大学院・消化器内科学), 竹内 学(新潟大大学院・消化器内科学), 野本 実(新潟大大学院・消化器内科学), 上村 直美(新潟大・産婦人科), 小木 幹奈(新潟大・産婦人科), 吉田 邦彦(新潟大・産婦人科), 山田 京子(新潟大・産婦人科), 山口 雅幸(新潟大・産婦人科), 榎本 隆之(新潟大・産婦人科), 高桑 好一(新潟大・総合周産期母子医療センター), 三嶋 行雄(新潟大・1生化学), 木南 凌(新潟大・1生化学), 青柳 豊(新潟大大学院・消化器内科学)
抄録 症例は妊娠16週の24歳女性で一ヶ月続く掻痒感と黄疸で当院を受診した.血液検査ではT-Bil 6.3 mg/dL, AST 264 U/L, ALT 545 U/Lと上昇を認めたが,血清学的にはウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎,原発性胆汁性肝硬変等を疑う所見を認めなかった.また画像検査でも閉塞性黄疸や慢性肝疾患の所見を認めなかった.症状及び検査結果から妊娠性肝内胆汁うっ滞症 (Intrahepatic Cholestasis of Pregnancy :以下ICP)を念頭に,本症に関連する既知のSNPsを解析した.DNA sequenceの結果,ABCB11のExon13にアミノ酸変異を伴うSNP (1331T→C)を,ABCB4にsilent SNPを認め,ICPと診断した.欧米で第一選択とされるUDCA内服を開始したところ,掻痒感,黄疸は改善し,出産後に消失した.ICPは欧米で多くの報告があり,本邦ではまれとされている.強い掻痒感を伴い約20%に黄疸を認め,胎児の周産期死亡率を上昇させる疾患である.診断には各種肝疾患の除外が必要で,最近では欧米からABCB11ABCB4遺伝子のSNPsが発症に関与することが報告されている.治療はUDCAが有用であるとされており,本症例においても効果的であった.本邦ではICP症例におけるSNP解析は報告がなく,本症例はICP原因遺伝子のSNPにより診断しえ,治療を行った初めての症例である.当院における過去10年の妊娠中肝障害例の検討の結果,薬剤性肝障害の他,原因不明で出産後に速やかに軽快している症例が数例存在した.ICPはその後の妊娠時に再燃することが多く,重症化する症例も存在することから,妊娠中の原因不明肝障害についてはICPも鑑別診断として念頭におく必要が示唆され,貴重な症例と考えられたので報告する.
索引用語 妊娠性肝内胆汁うっ滞症, 肝障害