セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

生化学・分子生物学

タイトル 肝P-274:

慢性肝疾患における血中亜鉛濃度の低下は肝の炎症により惹起される

演者 法水 淳(大阪労災病院・消化器内科)
共同演者 岡原 徹(大阪労災病院・消化器内科), 鈴木 麻菜(大阪労災病院・消化器内科), 中村 昌司(大阪労災病院・消化器内科), 末吉 弘尚(大阪労災病院・消化器内科), 吉井 俊輔(大阪労災病院・消化器内科), 有本 雄貴(大阪労災病院・消化器内科), 平尾 元宏(大阪労災病院・消化器内科), 山本 俊祐(大阪労災病院・消化器内科), 佐藤 雅子(大阪労災病院・消化器内科), 小森 真人(大阪労災病院・消化器内科), 吉原 治正(大阪労災病院・消化器内科)
抄録 【目的】血中亜鉛濃度は慢性肝疾患の進行に伴い低下すること,亜鉛が活性酸素の除去に重要な役割を果たしていることはよく知られている.また,慢性肝疾患のかなり早期の段階で血中亜鉛濃度が低下し,亜鉛の補充により肝機能維持及び発癌抑制に対して有効である可能性を前回の肝臓総会において我々は報告した.しかし,慢性肝疾患において亜鉛濃度が何故低下するのかに関してはいまだ明らかではない.今回,我々は経時的に血中亜鉛濃度が測定できた慢性肝疾患患者74例に関して亜鉛濃度低下の原因に関して検討を加えたのでここに報告する.【方法】慢性肝疾患患者74例全例で経過中に亜鉛濃度の低値(65μg/dl未満)を認めた.このうち,前回亜鉛濃度測定値より10μg/dl以上の低下を認めたポイントを見つけ,その前後の血液データを検討した.【成績】患者背景は,男性/女性 36/38人,平均年齢70.9±10.2歳,HCV/HBV/NASH/ASH 42/7/8/10人,平均観察期間は45.3か月,観察開始時における血液データ平均値はAST 47.9±24.1 U/l,ALT 43.7±27.4 U/l, T.Bil 0.85±0.46 mg/dl,Alb 3.7±0.4 g/dl,PT 81.7±13.1%,血小板 13.8±6.6万/ul,Zn 73.4±10.5μg/dlであった.上記の通り亜鉛濃度が低下を認めたポイントは24回であり,低下前後でAST 85.6±33.0→83.0±31.4,ALT 79.8±26.6→73.3±30.2, T.Bil 0.92±0.39→0.95±0.46,Alb 3.8±0.6→3.7±0.6,PT 83.1±12.5→82.7±12.1,血小板 10.7±4.2→10.4±4.4,Zn 69.0±9.3→53.6±8.7であり,低下前後共にAST,ALT値が有意に観察開始時と比較して高値を示した (p<0.01).【結論】慢性肝疾患において肝の炎症が亜鉛低下を惹起する可能性が示唆された.慢性肝疾患患者においては肝の炎症が高度な時は亜鉛濃度の低下に注意する必要があると考える.
索引用語 亜鉛, 炎症