セッション情報 ポスターセッション(肝臓学会)

B型肝炎-病態・診断3

タイトル 肝P-283:

当科におけるde novo B型肝炎症例の臨床的検討

演者 高木 秀安(札幌医大・1内科)
共同演者 松永 康孝(札幌医大・1内科), 志谷 真啓(札幌医大・1内科), 阿久津 典之(札幌医大・1内科), 本谷 雅代(札幌医大・1内科), 山本 博幸(札幌医大・1内科), 佐々木 茂(札幌医大・1内科), 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
抄録 背景:Rituximabの登場以来,本邦において化学療法や免疫抑制療法後のHBV既往感染例からの再活性化(以下de novo B型肝炎)の発生が注目され,劇症化進展率および死亡率の高さから,その早期診断および早期治療介入のため2009年に厚労省研究班によりガイドラインが策定された.目的:これまで当科で発生したde novoB型肝炎症例の臨床背景および経過につき検討し,当科の現状について報告する.対象と方法:対象は2005年から2012年までに当科で発生したde novo B型肝炎9症例.肝炎発症例についてその臨床背景および経過につき検討した.結果:性別は男性5例女性4例,平均年齢61.1歳.肝炎発症時のALTピーク値の中央値は246 IU/ml(45-3657).背景疾患は7例が血液疾患にてRituximabの投与または造血幹細胞移植を受けていた.残り2例は膠原病関連疾患で,1例が多発血管炎にてステロイド等の免疫抑制治療を受け,また1例では関節リウマチにてTNF阻害剤の投与を受けていた.造血幹細胞移植を受けてから肝炎発症までの期間は中央値19.5ヶ月(5.8-97.2)であった.9例中8例では発症後核酸アナログの投与が行われ,投与例全例で劇症化することなく回復した.1例で悪性リンパ腫再発による感染症増悪および心不全にて核酸アナログ投与不能のまま死亡した.考察:当科ではこれまでのところ消化器疾患における化学療法にてde novo B型肝炎を発症した症例は経験しておらず,これまでの報告と同様に血液疾患での発症が目立っていた.再活性化に関わるガイドラインが策定されて以降,当科でもキャリア例はもとより既往感染例において化学療法や免疫抑制療法を行う場合には,経過中HBVDNAのモニタリングを実施し,現在までのところ死亡に至る肝炎は経験しておらず,ガイドラインの妥当性を実感している.なお当科症例において造血幹細胞移植後,およそ8年を経て再活性化を生じた症例を経験しており,長期経過例においても再活性化を生じうることを念頭に,慎重な経過観察が必要と考えられた.
索引用語 de novo B型肝炎, HBV再活性化